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~ドルアーガの塔・フロア2~ 「ふぅ・・・2階到着!」 そして前の階と同じように探索を開始する。 するとやはりスライムを見つけた。 ただ、このスライムは先程のものとは少しばかり違うようだ。 「黒い・・・?それと少し素早いか・・・だが恐るるに足らず!」 exsisは自信満々にブラックスライムへと立ち向かう。 「食らえぇい!」 と、exsisが切りかかった瞬間、スライムはそれに合わせたように弱点を隠した。 そして勢い余ったexsisはスライムに直撃。 「あqwせdrfgtyふじこlp;」 声にならない叫びを発しながら床を転げまわるexsis。 「畜生スライム風情が・・・そうか!剣を出して自ら刺さるのを待てば・・・。」 予測は見事に的中、動き回るスライムは自ら剣に刺さった。 「そうか、スライム系はこうやって倒せばいいのかー。」 コツを得て調子に乗ったのか、exsisはフロア中のスライムを殲滅していた。 「ははは!スライムがゴミの様だ!・・・っと、宝箱はっけーん」 罠かどうかも疑わずに宝箱を開けるexsis。 「金のブーツかぁ・・・羽付いてるし何か高級そうだから履き替えちゃおーっと。」 と、exsisがブーツを履くと何やらブーツが一瞬光を発した。 「ん?何か光ったけど、って速っ!何コレ歩くの速っ!」 あまりの速さに何かが壊れたのか迷路を走り回る。 「わっはー!凄く速い!速い!よっしゃこの勢いで鍵ゲット&イン!」 本当にそのままの勢いで階段へ消えていった。 あとがき ブラックスライムに手こずったのは自分だけじゃないはず、だと思いたい。 名前 コメント
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「大きい……」 私の目の前には巨大すぎる雪像が2体、鎮座していた。 「お祭りに行かないか?」 私がここに来て2週間、足の痛みも無くなったころドナヒューさんがお祭りに誘ってくれた。 そして私は雪祭りの会場にいるのだが。 「すごいだろう、何せ兵隊さんまで手伝って作っているからね」 なぜか、私の隣には王冠をかぶった謎の人物が立っている。 私たちが雪祭りの会場に着いたとき、ドナヒューさんが子ども達に囲まれて連れて行かれてしまった。 一人で雪像を見上げ途方にくれていた私に声をかけたのが、この謎の人物。 「あのー、あなたはいったい………」 「お、俺か?えーっと…そう!俺は1番雪祭りを楽しむ男、名付けて雪祭りキング!」 いま、この場で考え付いたようなネーミングだった、と言うか自分で『名付けて』と言ってしまっている。 「雪祭りははじめてみたいだが、良ければ案内しようか?」 限りなく怪しい格好をした人物だったが、限りなく人のよさそうな笑顔に、私は頷いていた。 キングさん(仮)の案内で雪像に登ってみたり、出店を巡っていたりしていると、出店の一角が騒がしい。 どうやらフランクフルトの屋台の店主とその弟子が言い争っているようだった。 「だから、無茶ですよ師匠!」 「バッカヤロウ!こんぐらいで店閉められるか!」 何事かとキングさん(仮)が近づいたので、私も後に続いた。 「どうしたんだい」 「あっ!はんお ムグゥ……」 何か言おうとしたお弟子さんの口をキングさん(仮)の手が光の速さで塞ぐ。 「俺の名は雪祭りキング、誰よりも雪祭りを楽しむ男。それで、親っさんどうしたんだ?今年の屋台に何か問題でも?」 「ああ、はん…雪祭りキングさんか、屋台には何の問題も無えよ。あるのは俺の腕だよ。」 見ると腕には白い包帯が巻かれていた。 「今日になってヘタうっちまった。でも雪祭り始まってからずっと出し続けてるこの店、閉めちまうわけにはいかんし………」 「でも、その腕じゃ無理ですよ師匠………」 賑やかな雪祭りの会場でその場所だけが重苦しい雰囲気に包まれていた。 「あ…、あの!」 自分でも何故こんなことを言ったのか理由がわからない。 「私が焼きましょうか?」 でも、『困っている人を助けるのに理由が要りますか?』その言葉だけで理由は十分なような気がした。 十分に熱された鉄板の上にもうすぐ焼きあがりそうなフランクフルトがある。 ここまでは順調、後はタイミングさえ間違えなければ良い。 呼吸でタイミングを計ってフランクフルトを取り上げる。 「どうぞ」 焼きあがったフランクフルトを3人の前に差し出す。 「むっ!」 「これは!」 「……むう」 緊張に身を硬くする。 「「「うまい!」」」 3人の声が重なった。 「これなら店を十分まかせられるぜ。譲ちゃん」 親父さんが笑顔と一緒にそう言ってくれた。 自分の料理を褒められてこんなに嬉しかったことは無かった。 いざ、店を開けてしまうと長蛇の列ができた。 お弟子さんが列を整理したり、親父さんがお勘定をしたりする横で私はひたすら焼いていた。 キングさん(仮)は「他のフランクフルト屋も巡ってみる」と言って行ってしまった。 結局、材料が切れるまでお客さんが途切れることは無かった。 「お疲れ様です」 座り込んで休憩していた私に、声と共に暖かな湯気に包まれたよんた饅が差し出された。 顔を上げるとドナヒューさんが立っていた。 ありがとうございますと、お礼を言って受け取る。 「どうだった?はじめての雪祭りは」 「とても楽しかったです。キングさん(仮)の案内で色々見て回れましたし」 それに、と付け加えて 「はじめて人助けもできましたし………」 キングさん?とドナヒューさんは首をかしげていたが、私に笑顔で 「そうですか、それは良かった」といってくれた。 そういえば、キングさん(仮)はどこに行ったのだろう? 吏族の人に両脇抱えられて「まだ5軒のこってるっ!それに〆のラーメン喰ってねえ~~~~」 と叫びながら連れて行かれたような気がしたけど。 などと考えていると、向こうから雪煙をあげながらキングさん(仮)が走ってくる。 それを見たドナヒューさんが凄く驚いた顔をしたのが気になったが、声をかけた。 走ってきたキングさん(仮)は私の前に立つなりこう言った。 「うちの国民になりませんか」 呆気にとられた私の表情を見てかキングさん(仮)は息を落ち着かせると言葉を続けた。 「すいません、いきなりで。聞いた話では怪我をしていたのでその治療のためにこの国に留まったとか」 そうだった、私は怪我の治療のためにここにいたのだ。 その怪我も治ってしまった。 だから私はこの国から 「出て行くのですか?」 ハッとして振り向くと真剣な顔をしたドナヒューさんがいた。 「それはあなたが『偽り』だからですか」 知っていたのですか、と言ってうつむく私 「知り合いに植物学者がいるといったでしょう。彼があなたの名前は『偽り』と言う意味だと教えてくれました」 「そう…です…」 絞り出すようにしか声が出なかった、上手く言葉にできない。 「私のフィサリスと言う名前は偽名です」 ずっとあなた達を騙していたんです! みんなの人の良さにつけこんで利用しようとしていただけなんです! 私はそんな最低の女なんです! そう叫んでしまいたかった。けれども言葉は喉に引っかかって出てこなかった。 「本当の私はこの国にいてはいけない人間なんです」 ようやく変わりの言葉を何とか絞り出した。 「でも、偽りの君も君です」 うつむく私にドナヒューさんが近づく 「毎日、学校にお弁当を届けたのも、子供たちのいい遊び相手になっていたのもみんな君がしていたことです」 そう言って私の頭の雪を撫で払った。 「あなたが偽りでも、本当のあなたを気にする人なんてここにはいません」 キングさん(仮)優しい声で私に話しかけてきた。 「たとえ偽りであろうとも、本当のあなたがどんな人でも」 真面目な、でも人のいい表情で。 「あなたがこの国にいたいと言うのなら」 「私は、この国は、あなたを歓迎します」 本当に温かな笑顔でそう言ってくれた。 「わたっ…私はっ」 その笑顔が、その言葉が、あまりにも嬉しくて温かかったから。 「私は、この国に…いたいです」 泣きながらいま言いたいことを口にしていた。 私は偽りだけれども、今のこの気持ちだけは本当だ。 最後にキングさん(仮)は 「それに、最後まで吐き通した嘘は本当になりますから」 とも付け加えた 散々泣いていた私が泣き止むとキングさん(仮)が突然立ち上がって大声を上げた 「かくたさん!いるんだろう」 私がビックリしていると突然、近くにあった雪だるまが爆発し中から人影が飛び出してきた。 「よくお分かりになられましたね、よんた様」 すごく美形でスーツの似合う壮年紳士といった風貌の人物だった。 「君が城から抜け出した私を追ってきていないわけがないからね。それより彼女の国民登録と住居の手配を頼むよ」 キングさん(仮)と親しげに言葉を交わした紳士は 「畏まりました。住居は城の寮が空いておりますのですぐに用意できます。国民登録も問題ないでしょう」 そう言って颯爽とした足取りで城に向かっていった。 そのやり取りを見ていたドナヒューさんが 「さすが、藩王様。素早いなあ」と呟いた って!ちょっと待って! その言葉を聞いた私は一瞬で混乱してしまった。 今までの情報を整理すると、キングさん(仮)の正体は! この国で1番偉い、藩王よんた様ということに! この国に来て2週間、もう驚くことは無いと油断しきっていたからこの不意打ちは効いた。 エライ人にエライことをしてしまった! などと言うことを考えて混乱している私の前に、キングいや、藩王様は立つと はじめてあった時と変わらない、人のよさそうな笑顔でこう言った。 「ようこそ、よんた藩国へ」 こうして雪祭りの夜、私は寒いけどとても温かな人たちがいるこの国の住民になった。 <おまけ> 「かくたさん、フィサリスくんの勧誘に行ってくるよ」 「調理場の件ですね、かしこまりました。しかし、彼女が首を縦に振るのでしょうか?」 「かくたさん、私が今までに狙った獲物(料理人)を逃したことがありますか」 「………国民登録の際に採寸は済んでおります。あとで彼女の調理服を用意しておきます」 「それでは、入ってきます」 (文責 フィサリス)
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先生1号改「今日はグランドクロスについてです…ッス」 先生2号『なんだかいつもと違う気がする』 先生1号改「気のせいよ…ッス」 先生2号『…グランドクロス。すべてのきおく すべてのそんざいのボスが使う攻撃…』 先生1号改「すべてのじげんをけし そしてわたしもきえよう… えいえんに! の人の技ね…ッス」 先生2号『…どんな効果があるの…?』 先生1号改「すべてのステータス異常を引き起こすようなものだと思って差し支えないわ 死者なんかは石にされたり、ゾンビにされたり、忙しい技よ。気をつけなさいッス」 先生2号『…今上手く「ッス」って言えたつもりかもしれないけど、根本的に口調が違うよ…』 先生1号改「き…気のせいッス。さらば!」 先生2号『誰…?』 クリムゾンブロウ曰く「PARかってきた!」 ブラックパイソン曰く「今クリアした」
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「やった…!」 真境名 沙羅の能力である『ジェミニエンジン』人格を持ったドッペルゲンガーとも、守護霊とも呼ばれる「姉」が 前面の銃撃に気を取られているリーザロッテの虚を付き、背面から手榴弾を投げ込んだのだ 結果、それは成功した。これ以上ないタイミングで… 勝利を確信した沙羅の目の前で、爆煙が、風に揺られ消えていく 「うそ…!?」 「ホ・ン・ト」 沙羅の、そして姉の四肢が切り裂かれる リーザロッテは巨大な盾に身を守られ、健在だったのだ 「危なかったね。もう少しでそのキレイな顔に傷がつくところだ」 「助かりましたわ。ありがとう、エルフリーデ」 リーザロッテを守っていた盾は、トランプになり突如現れた少年の手の中に納まる 女王を腰に抱く少年―実は双子であり、男装の少女なのだが― は、女王と熱き口づけを交わすと 地に伏せる沙羅を見て笑う 「仕方ないなぁリザは。コレは金色の魔眼じゃないよ」 「あら。そうでしたの。この方がそう言われたからわたくしてっきり」 「そんな素直な君がボクは好きなのさ」 思った以上に手足を深く切られた。これでは暫く戦うことはおろか、立つことも叶わない あぁ、ダメ…。血が流れすぎた。気が遠くなる…デスメタルと次郎がやられちゃう 沙羅は強く願った。誰よりも、何よりも強く この二人を倒して、大事な二人を守りたい、と (それが貴女の願いなのね) (姉様…?) 消えゆく意識の中、沙羅は姉の声を聞いた気がした 「なんだいコレは」 「あら。これが魔眼の力なの?」 沙羅の身体から眩い光が放たれ、世界を包んでいく この二人を倒して、大事な二人を守りたいという願いが、王と女王を包んでいく …だが (ダメ、沙羅の力じゃこの二人には届かない。この願いは叶わない…!) 願いは叶わなかった。沙羅の限界を超えていたのだ。それ故に沙羅が死ぬことはなかった だが、同時にこの二人が倒れることもなく、逆にいえば三人が死の危険に晒される結果となった 「なんだ…光るだけかい」 「驚かさないでくださる?」 <来て…スラッシュメタル…!> ―白刃一閃。デスメタルの手には身の丈ほどもある巨大な剣が握られていた 十六聖伝外伝 残光 ~アリス・ザ・ワンダーワールド~ 最終章 第三話
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第三話 悔恨 魅力的な肢体。膨らんだ胸。曲線を美しく描くなまめかしい肉体。部屋に響き渡る喘ぎ声、体がぶつかりあう生温かい音。 そして温かく湿った陰部。 ぶつかりあう肉体は、互いを高めあい、その絶頂へと、濡れた翼を押し上げていく。 もう何度目になるか分からない性交。 精も尽き果てたはずなのに。 誰かが呟く。 何かがおかしい───。 ξ //////)ξ「ねぇ、・・・んっ・・あっ、ひゃうっ・・・す・・きだ・・よ・・!大好き・・・んっああぁ・・・」 ぐちゅぐちゅと音をたてる濡れた結合部。 もう理性はない。 狂ったように腰を突き上げていた。 そうして。 何度も絶頂をむかえる。 ξ ゜ー゜)ξ「ねぇ、轟」 ( ゜Д゜)「ん?」 一段落したベットの中。 寄り添う彼女はこう言った。 ξ ゜ー゜)ξ「いつまでも一緒にいていい?」 少し思い切った甘い言葉。 ───瞬間。 夜空を星がうめつくしたように心がいっぱいになって、流れるのは一筋の涙。 分かる。今なら分かる。 何でか分からないけど。この存在が自分にとって欠かせなかったって───。 ξ ゜⊿゜)ξ「どうして、泣いてるの?」 ( ゜Д゜)「ん、ああ、いや、感動してな。そんなこと、もちろんいいに決まってるじゃないか。」 声はかすれて、震えている。 無理だ───。 どこかで誰かが叫ぶ。 守れなかった───。 そうだ。覚えてる。 自分は、何かを守れなかった。 絶対に忘れてはいけない何か───、いつでも後悔する、あの日。 ξ ゜ー゜)ξ「やった♪絶対に私のこと守ってよね!」 その言葉の意味。理解した瞬間、何かが心に強く引っ掛かった。 無理だ───。 どこかで誰かが叫ぶ。 ( ゜Д゜)「それは───、」 どうして、無理なんだ? 思い出そうとすると頭が痛い。 (; ゜Д゜)「む、・・・無理・・・だと思う・・」 ξ ゜⊿゜)ξ「えぇー、なんでー?」 何でか、は分からない。 だけど守れると胸を張って言うことは出来ない。 ξ ゜⊿゜)ξ「その体一つ、私のために捧げてもいいじゃない!」 ( ゜Д゜)「いや、剣の扱いはお前のほうがうまいし・・・」 適当な逃げ口上。だけどこれが。 ξ ゜⊿゜)ξ「剣?何それ、そんなもの使うわけないじゃない」 結局決定的な鍵だった。 違う。俺の知ってるシャナは不安なほど燃え上がる刀を、その華奢な体に似合わず振り回す女だった。 そしてそれを見て俺は彼女を口説きに行ったんだ───。 致命的な矛盾。 それが起爆剤となって全てをもう一度追体験する。 なんでこんなことを忘れていたんだ? シャナは俺の───、 俺のたった一人の大切な人じゃないか───。 無理だった───、守れなかった───。 どこかで誰かが叫ぶ。 ξ;゜⊿゜)ξ「・・・轟?」 目をパチクリとさせて俺を覗きこむシャナ。ああ、できることならずっとここにいたい。 月も見えなかった曇って寒かった夜。彼女は、たった一人で死んだ。蘇生が無駄なくらいズタズタに。 もしも、自分がそこにいたなら。 そんなことを毎日考えさせられる。 喉から声にならない声が出る。 そうして失意のまま戦争にも負けた。 ───ああ、やっぱり君がいないとダメだったって。 そう言ってもう一度抱き締められたら。 ξ ゜⊿゜)ξ「ちょ・・・ちょっと、轟!」 肉付きのいい体を抱き締める。人間味に溢れた温かさを抱き締める。 分かっている。彼女は自分の望みどおりに動く人形だって。ここが敵の罠だって。 それでも、狂ってしまうくらい愛しかった。 一人の大切な人。 ついには守れなかった人。 シャナは死んだ。もうどこにもいない。 はっきりと、夢を見てると感じた。 ξ ゜ー゜)ξ「・・・もう、お別れだね。」 ( ゜Д゜)「・・・ああ。」 そう、シャナが言っているような気がした。 ああ、自分が望んだことが起こるんだった、この幻想では。俺はこういうことを言って欲しかったのかもしれない。 ────言えぬまま、いなくなったから。 でもここにいたい、いさせてくれ、と願う自分もいる。 いつの間にかシャナの柔らかな感触も希薄なものになっていた。周りの世界は崩壊を始める。 シャナは言葉を続ける。 ξ ゜ー゜)ξ「私────、楽しかった。 何もしてあげられなかったけど、轟がいてくれてよかった。 また・・・夢で逢えるといいね」 稚拙なありふれた言葉。 その言葉に俺は。 ( ゜Д゜)「ありがとう。じゃあな」 まるで明日また会うみたいに。寂しげも惜しげもなく。 そっと、腕を離した。 最後に彼女の笑顔が見たかった。 でもそれは。 見ようとしても、何か見えにくくて。 ところどころがゆがんで、──滲んでいた。 目が覚めて最初に見たのは澄み渡る青空。 そして残滓───、いいや、柔らかな理想の感触が全身に残る。 そして鋭い腹部の痛み。どうやらなにかしらの魔術をくらってしまったようだ。 だがこれくらいはなんてことはない。致命傷にはならない。 立ち上がる。そして敵を見つけ出す。 武器は───よし、手に握ったままだ。 もうつまらない幻術にはかからない。 あんな───幻想には溺れない。 抗う流れに乗っかって、轟はありあまるエネルギーを爆発させた。 ───忘れよう。それで、それだけで───。 そして、誰かをまた愛しよう。二度と、離さないと誓いながら。 それは攻撃というよりかは閃光のようなものだった。 ただの袈裟切り。それだけで勝敗はあっけなくついた。 血しぶきをあげて倒れるみかん。 (* `ω`)「勝者!轟!」 赤髪の男は溜め息を吐いて歩き出す。 気分は良くないようだ。俯いたまま舞台をあとにする。 ( ^ω^)「圧倒的な力だお・・・」 (´・ω・`)「身体能力では彼が一番かもしれないね。総合的に見たら。」 轟はすぐに治療を受けにいった。今はここにいない。 (;^ω^)「それにしてもどんな幻術にかかってたんだお・・・ぼーっとしてたお」 そう。轟は鈴の音が鳴った後はファイヤーボールに避けもせずぶち当たる、という有様だった。 ( ・∀・)「かかってみる?」 (;^ω^)「遠慮しますお・・・」 とここで実況が割り込んでくる。 (* `ω`)「勝負は一瞬!絶対に見逃すなよ諸君! では!第三試合!口裂け VS 秋葉!」 (;=A=)「ううう・・・鬱だ・・・」 頭を抱えながら口裂けは戦いの場へと赴いていった。 (* `ω`)「勝者!秋葉!」 (; A )「そりゃそ・・・うだ・・・ろ・・・ガクッ」 圧倒的な攻撃力。 口裂けも最初は防御系魔術や魔眼による予測で攻撃を防いでいたが、秋葉になかなかダメージをあたえられずスタミナ切れ。 川 ゜ -゜)「まぁ当然の結果だ。一対一で私に勝てる奴は数えるほどだ」 戦場をあとにしつつ秋葉はそう呟いた。 ( ^ω^)「なんという・・・目に包帯巻いて、なんかSUGEEEEEEE!!両○式とか遠野○貴みてぇぇぇ!! と思って活躍を期待した人もいたかもしれないのに・・・瞬殺なんて可哀相な子ッ!!」 (´・ω・`)「作者が型月厨で、勢いに乗せてやっちまったが、パクリ設定はさすがに長くは使わなかった、ってところか」 そしてすぐに次の試合の報せ。テンポはなかなかに早い。 (* `ω`)「第四試合!ヴィックス VS 巫女!」 *( ‘ ‘)*「あれ?もう私?」 从 ゜∀从「お手柔らかにな、巫女!」 ヴィックスはそう言いながらボーガンを持った。 *( ‘ ‘)*「あら、こちらこそ。」 巫女もそう言いながら宝石を一つ、ポケットに入れた。 *( ‘ ‘)*「容赦はしないわ・・・」 从 ゜∀从「手加減なんて言葉、産まれたときに母体に置いて来たぜ・・・」 向き合う二人。 そして、戦いのゴングが盛大な音をあげて鳴らされる。 戦いが始まった瞬間、ヴィックスはボーガンで打ち出す矢を呼び出した。 ヴィックスの手にされた刻印。それは今日のために用意した無限にある矢の倉庫。 それと同時に巫女は緑色の宝石を取り出した。 武道会サイドが持ち込むことを許した赤、青、緑、白の四つの宝石のうちの一つ。 宝石を高速で開放させる。そうしないと相手の攻撃に間に合わない。 从 ゜∀从「もらったァ!!」 撃ち出される高速の矢。だがそれを。 巫女はなんてことはない、と避けたのだ。 从;゜∀从「チッ・・・!」 さらに撃ち出される矢。だがいくら撃たれようと、全てを舞うように巫女は避ける。 *( ‘ ‘)*「あら、その程度でして?」 止みだした矢の雨の主に巫女は問う。 从;゜∀从「ほざけ・・・」 彼女は一時的に全能力を引き上げている。だから彼女にはありえない常軌を逸した動きができる。 *( ‘ ‘)*「さぁて、次は私の番かしら?」 そう巫女は呟く。彼女は深く息を吸い込み、一気にこちらまで走り込んで来た。 緑の宝石は身体能力の圧倒的向上。 シャープス、ヘイスト、硬化などのアビリティ及び魔術効果全てが自己に作用する。 相手はスナイプのスペシャリスト。 遠距離からの正確な射撃などは当然のごとくしてくるだろう。 そしてなによりも恐ろしいのは手数の多さと戦術。一見攻めどころと思えてもそれが罠なこともある。 巫女が挑むものは、大きな迷宮に等しい。 幾重にも張り巡らされた罠を愚策に変え、ボスを潰す。 それの攻略には圧倒的な身体能力が必要。頭で理解しても身体が動かなけりゃどうしようもない。 ( ^ω^)「巫女様の実力ってどのくらいですかお?」 ブーンは名無しに聞いた。激しい戦闘が繰り広げられている舞台から目を離さず、名無しは質問に答えた。 (´・ω・`)「・・・彼女の判断力と相手の戦力分析は随一だ。手強い人だよ。なんせ、一撃では確実に崩せないからね。 彼女に待ち伏せとか奇襲をかけられたなら逃げた方がいい。実戦では確実さを求める人だ。絶対に首をとられる。」 弓を避ける巫女を見ながらそれを聞いて考えた。 今の行動も巫女の計算の内なのだろうか。 それとも様子見か。 いずれにしろ、面白い闘いが見られるだろうとブーンは確信した。 ヴィックスはとうの昔に姿をくらましている。そのかわりに。 襲いくる無数の矢。しかも空間転移をうまく使っているのか、矢の出所は定まらない。 つまり四方八方からの矢。この身体能力と矢の感知の為の結界を張ってなければ今ごろは串刺しだろう。 *(;‘ ‘)*「ハッ、ハッ───、ハッ───」 あまりの運動量に肩で息をする。 矢は一つ残らず全部避けきっている。そもそも自分は武器を持っていないし、魔力を使って撃ち落とす気にもならない。 そのまま五分ほど耐えただろうか───、急に矢が止んだ。 *(;‘ ‘)*「ハァ───、ハッ──、終わり・・・?」 誰に問い掛けるともなく呟く。終わって欲しいという希望を。 ───無論。そんなものが受け入れられるわけがない。 次の瞬間に巫女が視認したのは前方を埋めつくす津波のような矢の波。 *(;‘ ‘)*「……!チッ!食らえ、サイクr・・・!?」 サイクロンで蹴散らそうとしたが、巫女はその異状に気付いて後ろを振り向く。 いや、後ろ、なんてものでは足りない。周りを見回す。 今相対している相手は迷宮、なんてものじゃなかった。 360゜、矢の波が巫女を囲んでいた。 このままでは───、波に押し潰される。 *(;‘ ‘)*「なら、上────!!」 自らの身体能力と複数の魔術を駆使し、巫女は今までになく高く跳び上がる。 それが罠と、分かりながら。 天下一武道会編 第三話 完 未成年にも大丈夫なように冒頭のエロシーンは極力削った。あと春樹とか参考にしました。 恋愛シーンは伏線とか前置きないと空虚だよね あとたくさんわっふるありがとうです>< 魔王編はそろそろ天下一と同時進行で進めて行こうと思います 新作者の小説にもできれば繋げられる形で そこらへんは新作者と相談していきます
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数日後 談話室に歌声とピアノの音が響く ミーナ中佐の歌と、サーニャの伴奏…リリーマルレーンだ キューブ型ネウロイを倒して基地に戻ってきた思ったら、突然これだ いや、いい歌だぞ?ただ、どういう風の吹き回しなのかな、と 歌が終わり、今度は拍手が鳴り響く 俺(歌なんて何年ぶりだろう。友の奴はたまにロックとか聴いてたけど) 今度ロンドンに行ったら、レコードでも買ってみようかな 宮藤「とっても素敵な歌でした!」 ミーナ「ありがとう」フフッ エイラ「サーニャのピアノはどうしター?サーニャのー?」グイグイ 宮藤「へ、ほっへもふてきれひたぁ」 エイラ「え~い、もっと褒めロー」グイグイ 俺「エイラ、それくらいにしてやれよ」 エイラ「い~や、まだまだダー」 宮藤「いは、いはいでふよ、エイラひゃ~ん!」 爆笑する一同。その中で中佐は、何かを押し殺すように笑っていた 第三話 Encounter and Messenger. その夜、俺は一人中佐の部屋に向かっていた。借りていた資料を返すためだ 俺「今日撃墜したキューブ型についての資料も欲しいな」 中佐の部屋の前まで来て、ドアをノックしようとした時、中から声が聞こえた。思わず手を引っ込める ミーナ「…こんな思いをするくらいなら、好きになんてならなければ良かった…てね。でも…そうじゃなかった」 俺(誰と話してるんだ?) ミーナ「でも、失うのは今でも恐ろしいわ。それなら…失わない努力をすべきなの!」スチャ 坂本「…ずいぶんと物騒だな」 俺(少佐?) ミーナ「約束して。もう二度とストライカーを履かないって」 坂本「それは命令か?そんな格好で言われても、説得力がないぞ」 ミーナ「私は本気よ!」 盗み聞きの趣味なんてないが、この場から動けなかった。当初の目的なんて忘れて、ドアの向こうのドラマに耳を傾ける 坂本「私はまだ、飛ばねばならないんだ…」 少佐がドアに方に向かってくる。ドアを開けたときに死角になる位置に移動する 運よく、少佐は俺と別方向に向かって廊下を歩き出した。おもわずため息をつく 俺は少しためらったが、ドアをノックし、中に入る 俺「夜分に失礼します、資料を返しに…!」 中佐はまだあの赤のドレス姿だった。月明かりに照らされ、どこか官能的な雰囲気をかもし出している だが、その手にはワルサーPPKが握られており、俺はなぜかスパイ映画の女殺し屋を思い浮かべた ミーナ「…もう読み終わったの?」 俺の姿を視認すると中佐はそそくさと銃をしまい、何事もなかったかのように振舞う 俺「…ええ、役に立ちました」 中佐に資料を手渡しし、一礼してから部屋をあとにしようとする ドアのところで立ち止まり、意を決して言葉を発する 俺「…今日、いえ、過去に何があったのかは聞きません。あなたが何を失ったのかも」 ミーナ「!」 俺「ただ、自分の経験からひとつだけ言わせてください。過去に縛られ、死者を想っていては、生きていけません。軍人ならなおのこと」 ミーナ「あなたに…あなたに何がわかるって言うの!?」 普段の落ち着いた性格からは想像できないような声を上げる 俺「これは遠まわしの忠告ですよ中佐。あなたは何もわかっちゃいない」 ドアノブに手を掛け、部屋を出ようとする ミーナ「…あなたも…昔誰かを失ったの…?」 先ほどとは打って変わって、今度は泣きそうな声で問いかけてくる。今まで話した事がなかったけど、中佐にならいいかな 俺「…基地が敵の襲撃にあい、部下や上司ら、50人以上が死んだ。女子供も入れてだ」 ミーナ「…」 俺「おやすみなさい」 ―抵抗軍スカイネットセントラルサウスゲート前前線基地 通称「南基地」 機械軍の南部進行に睨みを利かせる基地として、抵抗軍にとっては重宝され、機械軍には目障りだった場所 俺が十五歳のとき、南基地は機械軍の襲撃を受けた。敵の戦力は、T-800一体だけだったらしい らしいというのも、俺は当時偵察任務でその場に居なかったからだ そのT-800は人工細胞で金属骨格を隠し、人間に擬態していた。そのせいで侵入に気づけず、基地を丸ごと爆破された 家族は物心ついたときには居なかったし、恋人や親しい友人が死んだってわけじゃないから、あまりショックではなかったが… 「何で俺だけ生き残っちまったかな…」それだけである 悩んだり、気分が晴れないときは射撃訓練をする。これは向こうの世界に居た頃からの習慣だ 今日は結構銃の種類が豊富だ。整備兵に譲ってもらったSAA、正式入隊時に支給されたPPK、なぜか倉庫にあったウェンチェスターM1887 SAAとPPKの二丁撃ちから始まり、スピンコックでウェンチェスター乱射したり。ただ無心に引き金を引いているだけで、自然といやなことを忘れられる 俺(逃げてるだけなんだろうな…)ダァン!ダァン! 持ってきた最後の弾を打ち切り、射撃訓練場をあとにする 小腹が空いたので食堂に行ったらエイラが居た 俺「もう起きたのか。何食べてんだ?」 エイラ「サルミアッキ、お前も食うカ?」 俺「いただこう」 黒い飴だろうか?臭いはちょっと変わっているが、気にせず口に放り込む 俺「ん、なかなかうまいじゃないか」カラコロ エイラ「オー、俺は話がわかるナァ。ナーンカ皆まずいって言うんダ」 俺「へー、結構うまいのに」バリバリ まぁ、向こうに居た頃はゴキブリとかネズミとか食ってたから、味覚がちょっとおかしいのかもな エイラはこれからユニットの調整をするというのでお供することにした ハンガー エイラ「そういえば、お前のストライカーなんで灰色一色ナンダ?」 俺「ん?ああ、なんかそこらへんで拾ってきたらしい。面倒だからこのマンマ」 正確にはどっかに輸出される予定だったものをせしめたらしい エイラ「灰色のメルス、か」 ああ、スオムスじゃBf-109のことをメルスというのか 俺「ところでさ、宮藤とペリーヌのユニットは何処へ?」 エイラ「そういえばないナ。ペイント銃はあるし…何しにいったんダ?」 訓練は午前中にやったはずだし、午後は飛行訓練の予定はなかったはず… 俺「発進装置のラックの中に銃がない…まさか…」 <ウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!! エイラ「警報!?」 俺「行くぞエイラ!」 上空 坂本「じゃあ、宮藤は一人で向かったんだな!?」ブゥン ペリーヌ「すみません、元はといえばわたくしが…」ブゥン 坂本「その件はネウロイを落としてからだ」 坂本(余計な気を起こすなよ、宮藤…) いろいろあったが、状況を説明する。ネウロイが出現し、それを受け宮藤が単機先行、俺たちはあとを追っている 俺「エイラ、夜間哨戒明けなのに平気か?」ブゥン エイラ「平気ダヨ。お前は自分の心配してロ」ブゥン 俺「何かあったら言うんだぞ?」 エイラ「お前は私の保護者かよ…」 エーリカ「というより彼女を気遣う彼氏だね」ブゥン エイラ「!?///」 俺「ハルトマン中尉」ギロッ エーリカ「その赤目で睨まないでよ…」 ミーナ『宮藤さんが、ネウロイと接触したのは間違いないわ。でも、そこから先はサーニャさんにもわからないって』 エイラ「あいつ、まさか捕まったんじゃ?」 俺「縁起でもないこと言うなよ」 坂本「離れるようには言えないのか!?」 ミーナ『それが、ネウロイが何か、ジャミングのようなものを仕掛けているのかも』 俺「厄介だな…」 バルクホルン「とにかく急ぐぞ!」 ネウ子「」コアクパァ 宮藤「は…わ…」 坂本「まだ追いつかないのか、ミーナ!?」ブゥン! ミーナ『それが、ネウロイはガリア方面に引き返しているわ。巣に戻るつもりじゃ…』 俺「…くそっ」フラッ エイラ「お、おい!」 赤目を通した視界にノイズが入る。俺の頭にもジャミングが効いてるのか? 俺「…!? 少佐!あそこ!」 ノイズの先に、小さな人影が映る 坂本「!?」キュイーン 少佐が眼帯を外し、魔眼を発現させる 坂本「…宮藤のほかに、ウィッチがもう一人居る…いや、コアが見える。あれはネウロイだ!」 宮藤「あ…」スッ ネウ子「」コアキラキラ 坂本『何をしている!?宮藤!』 宮藤「あ!坂本さん!」 坂本『撃て!撃つんだ宮藤!惑わされるな!そいつは人じゃない!』 宮藤「違うんです!このネウロイは…」バッ 坂本「撃たぬなら退け!」ガチャッ ネウ子「」キィィン! 坂本「おのれ!」ダダダダダ ネウ子「キュイィィン!」バシュンバシュン! まずい…! 坂本「ぐっ!…がぁぁっ!」ドグァーン! 俺・エ「!?」 ペリーヌ「少佐!?」 宮藤「坂本さん!!」ブゥン 少佐の足からユニットが抜け落ち、海に向かって落ちていく。ペリーヌと宮藤が落下の途中でキャッチする ミーナ『どうしたの!?何が起きたの!?』 俺「少佐が撃たれた!繰り返す、少佐が撃たれた!救助チームを要請する!グリッド南東第25地区だ!」 バルクホルン「シールドは張ったのに…まさか!?」 ミーナ『バルクホルン大尉…ネウロイを追いなさい、命令よ!』 泣き叫ぶように中佐が言う。インカムからはわずかに嗚咽が聞こえる 俺「くそっ!」テュンテュン!! 編隊に前に飛び出て人型ネウロイにプラズマライフルを撃つ 人型ネウロイはウィッチのように回避機動を取り光弾をかわす。両手をこちらに突き出し、ビームを発射する エイラ「俺!避けろ!」 俺「言われなくても!」ブォォン! なぜか調子の悪い赤目を使ってギリギリのところでビームを回避する 敵未来位置予測で人型ネウロイの予測先を見切り、光弾を撃ち込む ネウ子「キュゥイィン!」 ウィッチで言うユニットの部分に着弾するが、さほどダメージを与えられない もう一度攻撃しようと銃口を向けるが、なぜか人型ネウロイは動こうとしない 俺「?」 ネウ子「キュイン」ブィン 不審に思っていると、ネウロイが近寄ってきた エイラ「俺!」 俺「待て、撃つんじゃない!」 銃を下ろし、人型と向き合い、静止する。こいつは自身の身が危ないとき以外は攻撃してこないのか? 人型がさらに近づいてくる。顔と顔の間が50cmもない 人型はしばらく俺を眺め、不意に手を俺の額に向ける その手の先が青く光ったかと思ったら、俺の脳に電流が走った 俺「グガァァァァッ!!」ガクビク エイラ「俺!?」 バルクホルン「何だ、何が起きてる!?」 体が電気ショックを与えられたかのように痙攣し、ライフルが手から離れ、ユニットが抜け落ちた エーリカ「まさか、洗脳…?」 視界が赤くなったり青くなったり、何か英語が表示されたと思ったら、象形文字のようなものが表示される。これはネウロイの言語? 俺「うぐぁっ!がぁぅっ!」ピー!ピー! 視界が真っ黒になり、中央に『SYSTEMS HACKED』の文字が表示される その文字が消えると同時に、俺の意識は吹っ飛んだ 俺「…がぁ…あぐ…」ガクッ 俺の体から力が抜け、四肢がダランと垂れ下がる。赤目は消え、元の黒目に戻っているが、ハイライトが入っていない エイラ「あぁ…」ガクブル ネウロイに捕まった親友を前にして、私は何もできなかった バルクホルン「おのれ…」ガチャ エーリカ「トゥルーデ待って!俺に当たっちゃう!」 バルクホルン「しかし…!」 俺 私の…を…で 一同「!?」 俺 私の… 私は耳を疑った。俺の口が動いている。しかし、俺の声ではなかった。機械的な無機質さを持った女性的な声 バルクホルン「洗脳、されたのか…?」 俺 私の、邪魔を、しないで… それを最後にネウロイは瞬間移動し、ネウロイのパワーか何かで支えられていた俺の体が宙に放り出される エイラ「俺!」ブゥゥン ああ、前にもこんなことがあったナ、立場は逆だけど。などと思いながら、俺の腕をつかんで体を引き寄せる エイラ「俺?しっかりしろ!俺!」 俺の体にはいまだ力がなく、まぶたは閉じられている エイラ「俺…」グスッ 何の反応もなくて、このまま目を覚まさないんじゃないかって思えてきて…涙を抑えられなかった エーリカ「エイラ…」 ハルトマン中尉が背中をさすってくれた。大粒の涙が、俺のジャケットの上に落ちる バルクホルン「…こちらバルクホルン。ネウロイを取り逃がした。少佐と、俺が負傷。これより帰還する…」 基地 医務室前廊下 宮藤「坂本さん!しっかりしてください!坂本さん!」 ペリーヌ「少佐!返事をしてください!」 宮藤が治癒魔法を掛け、必死に治療を施す。しかし、目を覚ます気配はない エイラ「…俺」 その隣のストレッチャーには、同じく意識のない俺が寝かされていた 男性医師と看護師が駆けつけ、二人を医務室の中に連れて行く 宮藤「あ…」フラッ バルクホルン「宮藤!?」 魔法力の使いすぎで、宮藤がふらつく リーネ「芳佳ちゃん?大丈夫?芳佳ちゃん!」 エイラ「…」 私は、目に涙を浮かべ、立っていることしかできなかった 夕方 坂本少佐は何とか一命を取り留めた。しかし、まだ予断を許さない 少佐の寝るベッドの脇のいすには、ペリーヌが座っていた ペリーヌの後ろには、俺が寝ているベッド。こちらのそばにはエイラが座っていた エイラ(俺…) 失いかけて始めて気づいた。私にとって俺は、とっても大切な存在になっていた 冗談を言い合ったり、戦闘でペアを組むだけじゃない。もっと大切な…それこそ、恋人みたいな サーニャ『エイラは、俺さんのことが好きなの?』 以前サーニャに言われたことを思い出す エイラ(私は…) 心電図の機械音だけが鳴り響く医務室。入り口のドアを開け、二人の少女が入ってきた。宮藤とリーネだ ペリーヌ「っ!」 宮藤の姿を確認したペリーヌはイスから走るように立ち上がり、宮藤の顔にビンタを浴びせる パン!と音がし、私は視線を宮藤たちに向ける ペリーヌ「あなたのせいよ…何か言いなさいよ!今までのうのうと寝ていたんでしょう!」 リーネ「芳佳ちゃんは、魔法力を使い果たして、」 ペリーヌ「あなたは黙ってなさい!」 リーネ「黙りません!」 宮藤「…」タッタッタ リーネ「芳佳ちゃん!?」 宮藤は少佐に駆け寄り、再び治癒魔法をかける。集中しているのか、運ばれたときとは違って無言だ エイラ「…」 ポーチからタロットカードを一枚取り出す。出たカードは、死神の正位置 俺「…縁起でもないな」ムクッ 今まで寝ていた俺が体を起こし、小声で言う エイラ「俺!?起きて大丈夫なのか?」 さっきまで全然起きる気配がなかったのに…でも、よかった ナ、泣いてなんかいないんダカンナ!/// 俺「俺の精神力なめんなよ」 口ではそういっているが、俺の黒目は虚ろだ 俺は宮藤たちのほうへ視線を向ける エイラ「…私たちにできることは?」 俺「ないな。ただ黙ってみてるだけだ…」 ダイヤのエースも、灰色のメルス乗りも、こんなときには非力である 翌朝 医務室 それから、一晩に及ぶ宮藤の治療の甲斐あり、少佐は無事目を覚ました 俺もかなり回復し、いざとなれば出撃できる。しかし、一日は安静にしてるようにとの事 宮藤「ん?あ…ああ!さk」 坂本「シー」 少佐はイスで寝ているリーネとペリーヌ、俺と俺のベッドに突っ伏すように寝ているエイラたちを指差した。静かにしろってことだ 宮藤「よかった…」 坂本「宮藤…ありがとう」 ありがとうといわれ、宮藤が少し顔を赤らめる。少佐は窓の向こう、空に眼をやる 坂本「宮藤、なぜ撃たなかった。あのとき、お前はなぜネウロイを撃たなかった」 宮藤「…撃てなかったんです」 少佐は宮藤の手をつかみ、引き寄せる 坂本「人の形をしているからか?あれはお前を誘い込む罠だ」 宮藤「でも、私あの時、何か感じたんです」 坂本「ネウロイは、敵だ」 宮藤「…もし私が撃っていたら、坂本さんも俺さんも、こんなことにならずに済んだんですか…?」 俺「そういう話をしてるんじゃないだろう?」 いつの間にか起き上がっていた俺が、横で寝ているエイラの頭を撫でながら言った 俺「過程や規則はどうあれ、俺と少佐は生きて帰ってきた。それで十分だ」 宮藤「でも…」 俺「あんたはミスをしたかもしれない。でも少佐を助けた。それでいいんだよ。 もし、自信が持てないなら、自分の行いが、その感じた何かが正しかったかどうか、その目で確かめればいい」 宮藤「…」 俺「少なくとも、俺の世界じゃそうした」 宮藤はどこか納得していないようだったが、中佐に呼ばれて医務室を出て行った 基地浴場 シャーリー「宮藤~自室禁固だって?それで済んでよかったなぁ!」ガシッ 宮藤「はわっ!はわわ」オッパ! ルッキーニ「シャーリーなんて、五回も禁固刑喰らってるもんねぇ!」 シャーリー「馬鹿言え!四回だ四回!」 エーリカ「私、六回!にゃはは~!」 皆の笑い声が浴場に響く。でも、私の気分は少し晴れなかった サーニャ「エイラ?」ワシャワシャ エイラ「あ、ゴメン。痛かったカ?」 サーニャ「ううん。でもエイラ、元気ない」 エイラ「…俺がさ、話しかけても、どこか上の空で。ちょっと心配ナンダ」 窓の外の空を見つめ、何かを考えているような俺の顔。今まで見せたことのない顔をしていた サーニャ「きっと疲れてるだけよ」 エイラ「そうだと良いんだけど…サーニャは、私と俺のこと、どう思ってるんダ?」 サーニャ「…エイラのことを応援してるわ。親友として」 エイラ「ソッカ…後であいつのところに行ってみるよ」 サーニャ「それがいいわ」 リンゴでも持っていこうかな 基地宿舎 バルクホルン「いいな、宮藤軍曹。必要なとき以外は外出禁止だ」 自室の扉には鍵をかけられ、私はベッドにうずくまっていた 宮藤(どうして、誰も信じてくれないの?あれは間違い?…ううん、きっと違う…私、どうしたら良いんだろう) ベッドに倒れるように横になり、目を瞑る 俺『もし、自信が持てないなら、自分の行いが、その感じた何かが正しかったかどうか、その目で確かめればいい』 医務室で言われた言葉を思い出し、今度ははねるように起き上がる 宮藤(やっぱり、確かめたい) 再び医務室 俺「…少佐は、ずいぶん飛ぶことに執着しているんですね」 ここ数日感じたことを、二人きりという状況を利用して聞いてみる 坂本「知っていたのか…」 俺「中佐と話しているのが聞こえてしまって。すいません」 坂本「謝らなくて良い…私は、まだ飛ばねばならないんだ」 俺「宮藤のことですか…でも、もうあなたは――」 坂本「お前は、何のために飛んでいる?」 俺の言葉をさえぎり少佐が質問を投げてくる 答えようかどうか迷った。でも、いい加減認めるべきだと思い、思っていることを口にする 俺「…好きな人のそばに、居るためですかね」 言った後、ものすごく恥ずかしくなった 坂本「エイラか。お前らお似合いだと思うぞ」 俺「///」 しばしの沈黙のあと、少佐が自分の質問に自分で答える 坂本「…私にとって、戦うことは生き甲斐だった」 俺「侍か…向こうの世界では、戦うことと生きることは同じ。ただ生きるために戦う。理由なんてない。そういう世界でした」 理由のない戦争。戦うこと、生き延びることが生活の一部になった世界 坂本「恐ろしいな…」 俺「ええ、とっても。でもこっちに来てから、戦うことに意味を見出せた。生きるためでなく、誰かのために戦う」 坂本「その誰かが…」 俺「エイラです。彼女は、俺がこの世界にいる理由そのものです」 坂本「向こうに未練はないのか?」 俺「戻らなきゃって義務感はありますけど、もし戻っても、またこっちに来ますよ」 エイラに会えなくなるのはいやだから 坂本「そうか…おっと、噂をすればだ」 エイラ「俺ー!」バァン 少佐の言葉通り、ドアをぶち破ってエイラが入ってきた 俺「医務室だぞ、静かにしろ」 エイラ「あぅ、ご、ごめん…そ、それより、お腹空いてないカ?リンゴ持ってきたんダ」 俺「ありがとう、いただくよ」 坂本「私にもひとつ頼む」 エイラ「リョーカーイ」 エイラはイスに座り、ナイフでリンゴの皮をむき始める。剥いたリンゴを何等分かに切り分け、楊枝を刺す 切り分けたひとつを手に取り、俺の顔に向けてから一言 エイラ「ホレ、アーン」 俺「…ナンノジョウダンカナ?」 エイラ「一回やってみたかったんダ」ニコッ いや、そんな笑顔で言われても…男のプライドが…だいいち少佐もいるし 坂本「お、うまいなこのリンゴ」モシャモシャ 何事もなかったかのように丸かじりしてる… エイラ「ホーラ」 俺「ん…///」 観念して差し出されたリンゴを口にする。やっぱはずかしい エイラ「ウマイカ?」 俺「…うん///」 何か話題を… 俺「そ、そういえばエイラ、俺のユニットや武器はどうなったんだ?」ムシャムシャゴクン 二つとも海に落っことした覚えがある エイラ「回収して、全部ハンガーにあるゾ。ホレもう一個」スッ 俺「アム…」 坂本「見てきたらどうだ?無事がどうか気になるだろ」 俺「そうですね、見てきますか」スクッ 二個目のリンゴを飲み込み、ベッドから立ち上がる エイラ「立って平気なのカ?」 俺「少しは体動かさないと。行こうエイラ」 エイラ「ウン!」ニコッ 最高の笑顔で手を握ってきた。驚いたけど、何かあったかい 坂本「ごゆっくり~」ボソ …何も聞こえなかったよ? ハンガー前廊下 俺「宮藤は自室禁固か。それで済んでよかったな」 エイラ「ホントだよ。でもまぁ、あれで命令違反とか減ればいいけど」 俺「おいおいひどいなぁ…」 抵抗軍じゃ、単純化された上下関係があるだけで、命令違反など規則や罰則はあまりない そもそも、罰則を与える前に死んでたりするのもある ハンガーの入り口の扉を開け、中に入る。発進装置の一つに灰色のメルスがセットされ、ラックにはプラズマライフルが収まっていた 手にとって一通り動作を確認する。特に問題はない エイラ「よかったナ」 俺「ああ…ん?」 エイラ「どうしタ?」 俺「…なぁ、宮藤は自室禁固中だって言ったよな?」 エイラ「そうだけど?」 俺「…宮藤のユニットがない!」 11と書かれた発進装置には、本来あるはずの宮藤の零式艦上戦闘脚がなかった エイラ「え!…まさか、脱走!?」 アワアワとエイラがうろたえる「少佐に連絡…いや中佐にカ?」などといってる 俺はベルトの右腰にSAA、後ろ腰にPPKを挿し、ポーチに予備の弾薬が入っていることを確認し、自分のメルスを装着する エイラ「お、おい?何してるんダ?」 俺「宮藤を追う。あいつはきっと人型ネウロイに会うつもりだ。俺も行く」 エイラ「行ってどうするんダヨ!?あのネウロイは俺を洗脳して――」 俺「人型ネウロイは俺を使って何かを伝えようとした!それを確かめに行くんだ!」 エイラ「ダメだ!そんなことしたら、今度こそ俺は…」 声が震えている。目にも涙が浮かんでいる。また俺が倒れると思っているようだ 俺「エイラ、信用しろ」 エイラ「でも…俺が…死んじゃ…」グスッ 俺「俺を誰だと思ってるんだ?灰色のメルス乗りだぞ?簡単に死んだりしない」 エイラがうつむいたまま黙ってしまう。広いハンガーの中で二人きり、メルスのエンジン音だけが鳴り響く エイラ「…皆にはなんて伝えればいい」 エンジン音にかき消されそうな、か細い声だった 俺「…I ll be back」 俺の言葉に顔を上げたエイラの目をしっかりと見る。その目には涙が浮かんでいた それでもエイラは笑顔を作る。俺も微笑み返す。今の俺たちに、言葉は要らなかった 滑走を始めた俺は、やがて雨の降る暗闇に消えていった ―次回予告― 俺「は?撃墜命令?」ブゥゥン エイラ『…あ、あのな俺!その、この任務が終わったら―ザー―に…を――ザー―』 俺「全員動くな!武器を捨てろ!」スチャ 宮藤(違う…このネウロイは、敵なんだ!) エイラ「俺!手を伸ばせ!――」 俺「…ああ、人間でもない」 エイラ(私たちの物語は、まだ始まったばかりナンダナ)
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「大きい……」 私の目の前には巨大すぎる雪像が2体、鎮座していた。 「お祭りに行かないか?」 私がここに来て2週間、足の痛みも無くなったころドナヒューさんがお祭りに誘ってくれた。 そして私は雪祭りの会場にいるのだが。 「すごいだろう、何せ兵隊さんまで手伝って作っているからね」 なぜか、私の隣には王冠をかぶった謎の人物が立っている。 私たちが雪祭りの会場に着いたとき、ドナヒューさんが子ども達に囲まれて連れて行かれてしまった。 一人で雪像を見上げ途方にくれていた私に声をかけたのが、この謎の人物。 「あのー、あなたはいったい………」 「お、俺か?えーっと…そう!俺は1番雪祭りを楽しむ男、名付けて雪祭りキング!」 いま、この場で考え付いたようなネーミングだった、と言うか自分で『名付けて』と言ってしまっている。 「雪祭りははじめてみたいだが、良ければ案内しようか?」 限りなく怪しい格好をした人物だったが、限りなく人のよさそうな笑顔に、私は頷いていた。 キングさん(仮)の案内で雪像に登ってみたり、出店を巡っていたりしていると、出店の一角が騒がしい。 どうやらフランクフルトの屋台の店主とその弟子が言い争っているようだった。 「だから、無茶ですよ師匠!」 「バッカヤロウ!こんぐらいで店閉められるか!」 何事かとキングさん(仮)が近づいたので、私も後に続いた。 「どうしたんだい」 「あっ!はんお ムグゥ……」 何か言おうとしたお弟子さんの口をキングさん(仮)の手が光の速さで塞ぐ。 「俺の名は雪祭りキング、誰よりも雪祭りを楽しむ男。それで、親っさんどうしたんだ?今年の屋台に何か問題でも?」 「ああ、はん…雪祭りキングさんか、屋台には何の問題も無えよ。あるのは俺の腕だよ。」 見ると腕には白い包帯が巻かれていた。 「今日になってヘタうっちまった。でも雪祭り始まってからずっと出し続けてるこの店、閉めちまうわけにはいかんし………」 「でも、その腕じゃ無理ですよ師匠………」 賑やかな雪祭りの会場でその場所だけが重苦しい雰囲気に包まれていた。 「あ…、あの!」 自分でも何故こんなことを言ったのか理由がわからない。 「私が焼きましょうか?」 でも、『困っている人を助けるのに理由が要りますか?』その言葉だけで理由は十分なような気がした。 十分に熱された鉄板の上にもうすぐ焼きあがりそうなフランクフルトがある。 ここまでは順調、後はタイミングさえ間違えなければ良い。 呼吸でタイミングを計ってフランクフルトを取り上げる。 「どうぞ」 焼きあがったフランクフルトを3人の前に差し出す。 「むっ!」 「これは!」 「……むう」 緊張に身を硬くする。 「「「うまい!」」」 3人の声が重なった。 「これなら店を十分まかせられるぜ。譲ちゃん」 親父さんが笑顔と一緒にそう言ってくれた。 自分の料理を褒められてこんなに嬉しかったことは無かった。 いざ、店を開けてしまうと長蛇の列ができた。 お弟子さんが列を整理したり、親父さんがお勘定をしたりする横で私はひたすら焼いていた。 キングさん(仮)は「他のフランクフルト屋も巡ってみる」と言って行ってしまった。 結局、材料が切れるまでお客さんが途切れることは無かった。 「お疲れ様です」 座り込んで休憩していた私に、声と共に暖かな湯気に包まれたよんた饅が差し出された。 顔を上げるとドナヒューさんが立っていた。 ありがとうございますと、お礼を言って受け取る。 「どうだった?はじめての雪祭りは」 「とても楽しかったです。キングさん(仮)の案内で色々見て回れましたし」 それに、と付け加えて 「はじめて人助けもできましたし………」 キングさん?とドナヒューさんは首をかしげていたが、私に笑顔で 「そうですか、それは良かった」といってくれた。 そういえば、キングさん(仮)はどこに行ったのだろう? 吏族の人に両脇抱えられて「まだ5軒のこってるっ!それに〆のラーメン喰ってねえ~~~~」 と叫びながら連れて行かれたような気がしたけど。 などと考えていると、向こうから雪煙をあげながらキングさん(仮)が走ってくる。 それを見たドナヒューさんが凄く驚いた顔をしたのが気になったが、声をかけた。 走ってきたキングさん(仮)は私の前に立つなりこう言った。 「うちの国民になりませんか」 呆気にとられた私の表情を見てかキングさん(仮)は息を落ち着かせると言葉を続けた。 「すいません、いきなりで。聞いた話では怪我をしていたのでその治療のためにこの国に留まったとか」 そうだった、私は怪我の治療のためにここにいたのだ。 その怪我も治ってしまった。 だから私はこの国から 「出て行くのですか?」 ハッとして振り向くと真剣な顔をしたドナヒューさんがいた。 「それはあなたが『偽り』だからですか」 知っていたのですか、と言ってうつむく私 「知り合いに植物学者がいるといったでしょう。彼があなたの名前は『偽り』と言う意味だと教えてくれました」 「そう…です…」 絞り出すようにしか声が出なかった、上手く言葉にできない。 「私のフィサリスと言う名前は偽名です」 ずっとあなた達を騙していたんです! みんなの人の良さにつけこんで利用しようとしていただけなんです! 私はそんな最低の女なんです! そう叫んでしまいたかった。けれども言葉は喉に引っかかって出てこなかった。 「本当の私はこの国にいてはいけない人間なんです」 ようやく変わりの言葉を何とか絞り出した。 「でも、偽りの君も君です」 うつむく私にドナヒューさんが近づく 「毎日、学校にお弁当を届けたのも、子供たちのいい遊び相手になっていたのもみんな君がしていたことです」 そう言って私の頭の雪を撫で払った。 「あなたが偽りでも、本当のあなたを気にする人なんてここにはいません」 キングさん(仮)優しい声で私に話しかけてきた。 「たとえ偽りであろうとも、本当のあなたがどんな人でも」 真面目な、でも人のいい表情で。 「あなたがこの国にいたいと言うのなら」 「私は、この国は、あなたを歓迎します」 本当に温かな笑顔でそう言ってくれた。 「わたっ…私はっ」 その笑顔が、その言葉が、あまりにも嬉しくて温かかったから。 「私は、この国に…いたいです」 泣きながらいま言いたいことを口にしていた。 私は偽りだけれども、今のこの気持ちだけは本当だ。 最後にキングさん(仮)は 「それに、最後まで吐き通した嘘は本当になりますから」 とも付け加えた 散々泣いていた私が泣き止むとキングさん(仮)が突然立ち上がって大声を上げた 「かくたさん!いるんだろう」 私がビックリしていると突然、近くにあった雪だるまが爆発し中から人影が飛び出してきた。 「よくお分かりになられましたね、よんた様」 すごく美形でスーツの似合う壮年紳士といった風貌の人物だった。 「君が城から抜け出した私を追ってきていないわけがないからね。それより彼女の国民登録と住居の手配を頼むよ」 キングさん(仮)と親しげに言葉を交わした紳士は 「畏まりました。住居は城の寮が空いておりますのですぐに用意できます。国民登録も問題ないでしょう」 そう言って颯爽とした足取りで城に向かっていった。 そのやり取りを見ていたドナヒューさんが 「さすが、藩王様。素早いなあ」と呟いた って!ちょっと待って! その言葉を聞いた私は一瞬で混乱してしまった。 今までの情報を整理すると、キングさん(仮)の正体は! この国で1番偉い、藩王よんた様ということに! この国に来て2週間、もう驚くことは無いと油断しきっていたからこの不意打ちは効いた。 エライ人にエライことをしてしまった! などと言うことを考えて混乱している私の前に、キングいや、藩王様は立つと はじめてあった時と変わらない、人のよさそうな笑顔でこう言った。 「ようこそ、よんた藩国へ」 こうして雪祭りの夜、私は寒いけどとても温かな人たちがいるこの国の住民になった。 <おまけ> 「かくたさん、フィサリスくんの勧誘に行ってくるよ」 「調理場の件ですね、かしこまりました。しかし、彼女が首を縦に振るのでしょうか?」 「かくたさん、私が今までに狙った獲物(料理人)を逃したことがありますか」 「………国民登録の際に採寸は済んでおります。あとで彼女の調理服を用意しておきます」 「それでは、入ってきます」 (文:フィサリス)
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待ちに待った、アカデミーの入学式。 これから、学んでいくことへの希望と期待を隠せない少年少女。 顔見知りのメンバーも居るけれども、全く知らない人もいる。 しかし、自分の周りに居る人間はルーラの同級生になる者たちばかりだった。 果たして自分は仲良くなれるのか、と不安を交えながら辺りを見回す。 きっと、大丈夫。大丈夫。 暗示のように、そう聞かせながら。 #2 その少年、粗暴につき ルーラside 入学式が終わり、私は思い思いの場所へ向かう新入生徒たちの波に紛れていた。 「あーっ、終わったぁ……」 私は、背伸びをしてみせる。 「そうだねぇ……結構、長かったよね」 プラチナくんはそう言って、欠伸をひとつ。 「……あれくらい普通でしょ」 親友のシリウスちゃんは一人だけ平然とした顔をして言い放つ。 プラチナくんとは、クロちゃんの件から仲良くなった。 それからこうして共に行動を取ろうとしてくれる。 ……なんだか、心強いなぁ。 私はふふっと微笑みながら、二人を見た。 不思議そうな顔で私に返事するように二人は見つめ返してくる。 そう、講師の先生は年が近めで優しそうな人が多かったんだけど……教官の先生が、少しだけ怖かったのだった。 何だか、少しでも粗相をすると叱られそうな、そんな感じさえした。 「ねぇ、学校探検してみない?」 そんな気持ちを抑えながらも一つ、提案をする。 「そうね、……何処に何があるかくらいは把握したいわね」 「うん、ボクも賛成だよ」 意外と二人ともが好意的な意見を示してくれて私はさらに嬉しくなった。 「そうと決まればしゅっぱぁーつ!」 私はくるりと一回転して、フワッとスカートを揺らした。 ……おっと、今日は急いでてスパッツ履いてなかったのよね……。 あまり、無理はしないほうがいいかな。 そんな私のパンチラ事情はつゆ知らず、二人は先に歩き出す。 「あ、ま、まってよぉお……提案した私を置いていかないでよ~」 私は、二人についていった。 そういえば入学式を終えて一つだけ気になる事があった。 アカデミーは少しだけ変わっていて、学科ごとに答辞を読むことになっている。 それは、ほとんど単純明快なものであるが……。 ちなみに、魔法学科はシリウスちゃんが答辞を読んでいた。 さすが主席で卒業したスピカ・フィーナの妹……と親友としてもとても名誉なことだった。 でも私は、その中でも錬金術師学科の答辞を読んでいたあの青緑色の綺麗な長髪……。 そして、頭の良さそうでクールにも見えるあの整った顔の美少年が気になっていたのだった。 「ねぇ、そう言えば入学式の錬金術師学科の答辞読んでた人って誰か解る?」 私は、もっとあの子の情報が知りたい――はやる気持ちを堪えきれずにシリウスちゃんたちに疑問をはき出した。 「アンタそういうチェックだけは早いわねぇ……。知らないの?成績優秀……余裕の主席。トレアン・ブレスよ。 あの子ちょっとした有名人だから。自称トラスタ村の情報通のアンタが知らないなんて珍しいわね」 シリウスちゃんは、意外な私の質問に少し顔をしかめたあとに直ぐいつもの表情に変わり、丁寧に教えてくれた。 こういうところはなんだかシリウスちゃんの性格が出てるよねっ。 「今回はノーチェックだったのー!わ、私ああいう王子様顔系には弱いものっ」 ふんっと威張るようにして言う。 「えばることじゃないわよ……」 シリウスちゃんは、呆れながらそう言った。 「へぇ、ルーラちゃんはああいう子がタイプなのかぁ……意外だねぇ」 プラチナくんは私をからかうようにそう言った。 む、むぅ。意外ってどういうことなの?? 「えっ、それってどういうこと?」 私は疑問に思ったことは直ぐに口に出るタイプだ。 それを、よくシリウスちゃんにとがめられることもあるけど……解らないことは聞いた方がいいってスピカさんも言ってたもんねっ。 「何か、強そうな人が好きそうだったから」 あくまで、予測だけどね。と付け足すようにそう言いながらプラチナくんはそう答えた。 「そんなことないよー!私あんまり頭良くないから……頭よさそうな人って憧れるんだよねっ」 私はそう言うと、シリウスちゃんはため息をついて私の顔を見る。 「……だからって、ああいうのがタイプだとはね」 シリウスちゃんは今まで好きになったタイプとは違うとでも言いたげなふうにそう言った。 プラチナくんは私とシリウスちゃんの対話を聞かない振りをしつつも半分くらいは聞いているのか、苦笑を浮かべつつ傍観している。 「そういうシリウスちゃんはどうなの?気になる人でもいたの?」 私は今朝あったことを思い返しながら仕返しをするようにそう言った。 「……なっ……!い、いるわけないじゃないっ。だいいち、まだ入学式終わったばっかりよ」 シリウスちゃんの反応ははまさに図星といったようにもとれる。 ……ははーん、これは。 私にしては勘が良かったのかも?そんなことを考えながら親友の恋愛事情を心の中で応援することにした。 きっと、本人に応援するよって言った所で余計なお世話よ……と返ってくることが解った上でだ。 今まで、兄さんにべったりだったシリウスちゃんが突然の兄離れ……スピカさん、嘆きそうだな。 そんな事を考えていると、とても見慣れた顔が遠くから歩くのが見えた。 ……噂をすればなんとやら……? そう、そのシリウスちゃんの兄――そして、魔法学科講師でもあるスピカさんが向こうから歩いてきたのだ。 当然、私たちにも気づいていた。 「やあ、もう新しい友達ができたみたいで僕も嬉しいよ」 スピカさんは、いつもより増して心からの爽やかな笑顔で私たちに話し掛けてくる。 「……兄さん」 シリウスちゃんは、そんなスピカさんに聞かれたくない内容だったのか少しばつの悪そうな顔をして、コホンと咳払いをしてからスピカさんを呼んだ。 「えっ、お兄さんなの?」 プラチナくんは予想もしなかったと狼狽したような顔できょろきょろとスピカさんとシリウスちゃんの顔を見合わせる。 「……そう言われてみれば、似てるね。二人」 なにやら状況を把握したようにしてまた冷静さを取り戻すプラチナくん。 「そういう君も魔法学科だったね。僕は魔法学科講師のスピカ・フィーナだよ。シリウスの兄でもあるよ。これから宜しくね」 そういってスピカさんはプラチナ君を歓迎しているかのように握手を求める。 「プラチナ・ガーネットです。宜しく、お願いします」 プラチナくんは快く握手を求めてくれたスピカさんに驚いていたけど……やがてにっこり笑って、握手をした。 「あ、僕なんか用があったんだったなぁ……えっと……あ!思い出した。ルーラちゃん、ちょっといいかな?」 思い出したかのようにスピカさんは私に用があるといった様子で手招きをする。 シリウスちゃんとプラチナくん、それぞれの顔を見る。二人とも不思議そうな顔で、私の顔を見返す。 だけど、状況を理解したかのようにシリウスちゃんが先に口を開いた。 「……私たち、食堂でお茶でもしてくるわ。喉カラカラですもの。同じ学科としてもプラチナとはつもる話あるしね」 そういってシリウスちゃんは私に気を回してくれる。 時刻はちょうどお昼を過ぎていたが、その言葉はシリウスちゃんの優しさでお昼を待って居てあげるとでも言ったような口ぶりだった。 「う、うん。じゃあちょっと行ってくるね」 これから何が起こるかは全く想像がつかず、いつもとは違う力なく手を振る私にプラチナくんとシリウスちゃんは笑顔で送り出してくれる。 それだけでも少しだけ元気が出てくる。やっぱ友達って良いよね……ってしみじみ思う。 次へ #2 その少年、粗暴につき2 前へ #1 明日へ踏み出す勇気2
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翌日。 聖カトリーナ女学院高等部の土曜日は全学年午前授業のみである。 その内容は茶道、華道、必修クラブ活動と続くカルチャーセンターのような内容で、特に単位を気にする必要もない。 親か執事等の正式な連絡があれば欠席しても問題無く、この日静香は朝比奈から連絡を入れさせていた。 静香は朝から三度も風呂に入った。 絶望し、疲れ、酔っていたせいで『あののび太』と際どいところまでいってしまったが、 決してのび太を受け入れてはいなかったのである。 ――あああああ、もう最悪! なんであんな男とあんなことを! 静香はひどく苛立っていた。 朝比奈に八つ当たりしようにも優しく微笑まれ、 近頃ミス一つ見付けられない状況ではストレスを発散する方法すらない。 確かに常習犯と言って間違いないぐらい万引きの罪を犯してきた静香だったが、 それは毎回出来心なのであって、わざわざ万引きの為に出掛けることは無かった。 それ以前に、常にあの男が監視しているかも知れないと思えば、スリリングな遊びを終わりにする以外に道は無かった。 ヴァイオリンを弾いたところで叱られた昨夜よりも酷い演奏になって落ち込み、 何度風呂に入ったとて、あの男の汚れは到底拭いきれない気がした。 静香は二十畳ほどの自室を意味もなく掃除し始めた。 毎日プロの掃除婦が来ているのだから全く必要の無い作業だが、それでも何かしていたかった。 やがて静香は額に入った写真を手に取り、ベッドに寝転がった。 手にしたのは学院の姉妹達と撮った写真である。その写真を特に大事に飾ってある理由は……。 ――心優(みゆう)ちゃん……可愛い……わたしの心優ちゃん……。 乳房に手が行きかけてハッと起き上がる。あいつがいるかもしれないのだった。 「のび太さん、いる? わたし今すご~くエッチな気分なの。 だから、出てきておっぱいを触ってちょうだい? ねえ、おねが~い」 しばらく待ったが反応は無かった。朝比奈のほうは呼ばない限り部屋を訪ねてきたりしない。 安心した静香は二重になった秘密の引き出しからピンクローターを取り出した。 以前学院の姉様達がふざけて自らの自慰体験を告白し合っているところを通りかかり、 思わず立ち聞きして、震える玩具の存在を知ったのだった。 ――心優、あなたなら昨夜の穢れた思い出を忘れさせてくれるでしょう? 水色のバスローブをはだけ、黒い上下の下着だけになる。 カーテンは閉めていないが、ここは二階で、隣家から覗かれるほど狭い敷地でもない。 静香は目を閉じ、慣れた左手で乳房をもてあそびながら、右手は緩い振動のローターを操る。 時折薄目で心優の写真を振り返るが、さほど視覚的影響が必要なわけでなく、 『そばに心優の写真がある』という事実がいけない妄想を膨らませるのであった。 ――心優がそっとわたしにキスしてくれるの。 そよ風のように髪を撫でながら、 甘い吐息を耳に吹きかけながら……。 ピアニストの器用な指が羽毛の軽さでわたしの乳房を……。 細いケーブルを持って引かれたローターが滑らかで薄っぺらい腹部を下ってゆき、敏感な豆粒をかすめる。 ――だめよ、まだ早いわ。心優ったらせっ 「“かちさんね。だめだってば~。いゃん……くすぐったいわ”」 静香は『幻想即興曲』を中断し、その場に跳ね起きた。 「“今、確かにわたしの声がしたわ。あいつがいないかちゃんと確認したのに。 ……って、どうして思ったことが言葉に?” ……ちょっと! のび太さん、出てらっしゃい!」 クスクス笑いが聞こえたかと思うと、急にのび太の存在を思い出した。 ずっと視界に入っていたのにもかかわらず堂々とオナニーを公開させてしまうほどの道具……。 「“またやられたわ、石ころ帽子ね” ……いや! 心の声を聞かないで! “こっちはなんの道具なのかしら?”」 のび太は得意気に缶スプレーを見せつけた。 「あけっぴろげガス~」 あけっぴろげガスを吸った者は隠し事が出来ず、何でも大声で話してしまうのだ。 「“ドラちゃんに全然似てないのに、気持ち悪いわ。 ひょっとして可愛いつもりなのかしら? ばっかじゃない?”」 これも心の声だったが、むしろ静香はスッとした。 「物真似には自信があったのに! ひどいやしずかちゃん!」 「“それなら早く解除方法でも考えればいいのに、やっぱりのび太はグズね。 だいたい、この源静香様と対等な口をきくなんて、のび太のくせに生意気なのよ”」 冷酷な微笑を浮かべ、チャンスとばかりに普段考えないような悪態までついてみせる静香だった。 「そんなことをいつも思ってるのかい? からかってるんだろ?」 「“あ~ら、ごめんなさい。嫌なものを見せてしまったかしら? でも、思ってしまうんだから仕方がないでしょう? あなたが悪いのよ、この粗チン野郎!”」 「そ、粗チン野郎だって!? 大きいって言ってくれたくせに……。 ああ、どうせ僕はビッグライトで大きくした偽チン野郎さ! しずかちゃんなんか大っ嫌いだ! 意地悪! 性悪女! 女王様!」 のび太はどこでもドアを出して帰って行った。 「“なるほど、結構打たれ弱いタイプなのね。これは使えそうだわ”」 のび太をやり込めて少し気が晴れた静香は再びベッドに横たわる。 「“心優、お待たせ。さあお姉様をいじめてちょう……いやだわ、これじゃあオナニーも出来やしない。 ……やめて! 早くわたしを解放して!”」 そこへコードレスフォンが内線の呼び出し音で鳴り出した。 「“朝比奈かしら? 気を付けないと何を喋ってしまうかわかったもんじゃないわ”」 出てみるとやはり朝比奈だった。 「どうしたの?」 「お嬢様、お元気なのは結構ですが、どうかもう少しお静かに願います。 “若い娘が真っ昼間から何という遊びを。ああ、嘆かわしい”」 ずばり、聞かれていたらしい。静香は大いに慌てた。 「わ、わかったわ、ごめんなさい。 “そうよ、わたしはオナニーしてましたけど何か? 朝比奈だってするくせに。 あなたがいつもわたしの胸や脚をチラチラ見てるのだって知ってるんだから。 どうせオカズにしてるんでしょ? 奥さんも妊娠中だしね。あ~いやらしい” 違うの! 朝比奈、違うのよ!」 「も、申し訳ございません。 “確かにお嬢様のおみ足に劣情を感じたことは数知れず、 この歳になったとてあの張りのある乳房に顔を埋めてみたくもあり……ああ、踏まれてみたい。まっこと踏まれてみたいさ。 いっそ、お嬢様にボンデージを着ていただいて、ピンヒールでこの薄汚いジジイの尻を……” むむ、これは何ですかな? “……うむ、気のせいか”」 のび太が戻ってきたらしい。しかも朝比奈までその毒牙にかけて。 「朝比奈、注意して。しばらくお互いに近寄ったりコンタクトを取ったりしないほうがいいわ。 これはちょっと普通の出来事じゃないの。 “この色惚けジジイ、覚えてらっしゃい! あとでたっぷりと意地悪してやるんだから”」 「“うひょ~、たまらん。楽しみにしておりますぞ、お嬢様。 その際は革のミニスカートなぞお召しいただければ……” なるほど、以前話されていたドラえもん様の道具ですかな? わかりました。十分注意いたしますよ、“女王様” もとい、“淫乱娘” おや? “わがまま娘” “なぜお嬢様と言えないんじゃ? おぉ、言えたぞ”」 「“あなたが望む通りだったらお仕置きにならないでしょ? 足りないジジイね。頭使いなさい!” 朝比奈、とにかく気を付けるのよ! じゃあね!」 静香は受話器を置く。 「“どおりで意地悪が効かないわけね。わたしはあの老いぼれ豚野郎に餌を与えていただけなんだわ。あ~いやらしい! ……優しいお爺ちゃんだと思ってたのに”」 静香は気を取り直して顔を上げる。 「“さてと、どうやってあの変態をいぶり出そうかしら?”」 扉が開いてのび太が入ってくる。堂々と音を立てているのに静香は全く気付かなかった。 「“もう、中途半端なところでやめたから疼いちゃうじゃないの……。 だめよ、心を空っぽにして言葉を使わずに作戦を考えるの。無の境地よ!”」 そこで静香に閃きが訪れた。 「“フランス語で考えれば、あのお馬鹿さんにはわからないわ!”」 のび太はムッとした顔で四次元ポケットを探り『ほんやくこんにゃく』の準備をしたが……。 「“アン・ドゥ・トロワ・キャトル・スィス・セット……。七は何だっけ? ……そうじゃなくって! もっと意味のあるセンテンスを……。そうね……、 ジュ・マペル・シズカミナモト。わたしは源静香です。 ……って、訳してどうするのよ!”」 という堪能なフランス語っぷりで、のび太はただ腹を抱えて笑うだけだった。 静香の一人ボケ突っ込みに飽きてきたのび太は、静香にピンクローターと心優の写真を押し付けた。 さすがにピンクローターが手元に現われて静香は気付いた。 「いやよ、人前で……“オナニーするなんて”」 すると目の前に例の日焼け止めのボトルが飛んできた。 「ねえ、気味が悪いわ。とにかく一度出てらっしゃいよ」 のび太は石ころ帽子を脱いだ。 「しょうがないな~。まあ、しずかちゃんのオナニーならいつも見てるから、この辺にしといてあげようか」 「そんないつもしてるみたいな言い方ってあんまりだわ……」 「そうだね、週に四、五回じゃあ少なくとも毎日とは言わないもんね。 ところで『毎日』はフランス語で何て言うの?」 静香は顔を真っ赤にしてのび太の腕をつねった。 「それで? 今日はわたしに何をさせたいの? 機嫌が悪いから最低限の協力しかしないわよ?」 「まったく、しずかちゃんは怒りんぼさんだな~。せっかく望み通りにもっと大きくしてきたのにさ~」 のび太は臆面も無くチャックを下ろし、ボロンと逸物を放り出した。 どうやって収納していたのか、五〇〇ミリのペットボトルを二つつないだぐらいのサイズになっていた。 「それにしてもしずかちゃんは欲張りだね。遊び過ぎてガバガバになっちゃったのかい? そんなに緩そうには見えなかったけどな~」 静香は巨大魔羅を指で弾いた。 「あら、心の声が元に戻ったわ。ガスの効果が消えたのね」 「そうみたいだね。ちなみに何て言ったの?」 「どこの世界にそんな馬鹿みたいなおちんちんを欲しがる女がいるのよ! まあ、あんたには雌の馬か象ぐらいがお似合いだから丁度いいけどね。 どうせなら脳味噌をもうちょっと大きくしたらどうなの? この低脳野郎! ……なんて考えちゃったの。わたしったら、はしたないわ。おほほほほ」 静香はどうやらサド・マゾ両刀だったらしい。 わざわざ訊いておいて、のび太は急に怒り出した。 「……冗談だと思ってたけど、本気で僕のチンチンを笑ってたんだな。 完璧な美人の君には体のどこにも劣等感なんてないんだろうさ。 そうやって僕をからかうなら考えがあるぞ! ほら、パンツを脱いでお尻を突き出せ!」 「ちょ、ちょっと……そんなに怒らないでよ。ごめんなさい、調子に乗りすぎたわ」 「嘘だ! 今も『元々は粗チンの包茎野郎だったくせに』とか思ってるんだろ! さあ、早くお尻を出せ!」 「いやよ、それじゃあまるでレイプじゃない。そんな怖いのび太さんなんて嫌いよ」 「じゃあ、優しい僕なら好きなのか? そんな気持ちこれっぽっちも無いくせに! 嘘つき!」 乱暴に抱きかかえられ、元々下着姿だった静香はあっさりとパンティーを剥ぎ取られてしまう。 「や、やだ。わたし初めてなんだから!」 「そうだったね。じゃあ、これでいいだろ?」 のび太はスモールライトを取り出して、『標準より少し大きめ』程度までペニスを縮めた。 「そういう問題じゃなくて……。そういう問題でもあるけど……。 ねえ、どうせ断れないんだから優しくしてちょうだい? 素敵な思い出にしたいの……」 のび太は凶悪な笑みを浮かべた。 「君が望む通りだったらお仕置きにならないだろ? 朝比奈さんにも言ってたじゃないか」 静香は無理矢理鏡台に手をつかされ、鏡を見まいと目を閉じた。 「許して……。こんなのってあんまりよ!」 のび太は構わずプルプルの白桃をかき分け、果肉の切れ目からヌルリと亀頭の半分だけ侵入した。 「おや? 随分スムーズに入りそうだね? 犯されそうな状況に濡れちゃったんじゃないのかい?」 「馬鹿言わないで! あなたどうかしてるわ!」 「馬鹿って言ったな? そうさ、僕は道具を使わなければ今でも赤点ばっかりだよ。 あの聖カトリーナで上位組の君なんかとは月とスッポンだろうさ。そうやっていつもいつも人を見下して!」 のび太はねじ込むように腰を沈めた。静香の奥地は入り口ほど湿ってはいなかったのだ。 擦りむけそうな痛みに続いてプツンという感触があった。 短いうめき声とともに静香の初めてはあっけなく失われてしまったのだった。 ――どうだ、これでこのあばずれは僕のものだぞ! 「いぃっ、痛いわね! 馬鹿! 人でなし! 強姦魔!」 「何とでも言えばいいさ。僕は強姦魔だってなんだって、君さえ手に入れば構わないんだからな! 僕と君とは初めから対等なんかじゃないんだ! それを体でしっかり覚えておけ!」 のび太は真っさらな柔肉のキャンバスにピシャリと手形を描き込み、生木を裂くようにメリメリと膣壁をかき回した。 「動かないで! 痛くて死にそうなの! ……お願いだから」 ――都合のいいときだけ哀れっぽい声を出しやがって。これだから女なんて信用できないんだ! 「痛かったら濡らしてみろ! ほら、これが気持ちいいんだろ?」 「……許して……痛い……いたい……ゆるして……ください」 「お仕置きなんだから痛くて当然だ! 調教してやってるんだから有り難く思えよ、このマゾ女!」 すすり泣く静香にかまわず、のび太は狂ったように腰を振った。 やがて、少しずつ痛々しい摩擦抵抗が無くなってくる。 ――何だかんだ言って濡れてきたじゃないか。それとも中は血まみれか? まあ、後でおっぴろげて復元光線でも当ててやればいいだけのことだ。 痛みが緩和されたのか、静香は穏やかなため息をついた。鏡台にポツポツと涙が落ちる。 「……前の時はあんなに優しくしてくれたのに。……悲しい人ね。 脅して言いなりになったら飽きちゃったんでしょ? だから趣向を変えて強姦してみたくなったんでしょ? 女の子の気持ちなんてどうでもいいのね。こんなことをして、あなたは気が晴れるの?」 「うるさい! 気が散ると長引くぞ!」 眼下に従わせ、いくら陵辱しても説教を垂れる静香が憎らしかった。 のび太はどうにかして最愛の高慢女を服従させたいと思った。 自信に満ち溢れ、欠けるところのない完全無欠のお姫様を。 それがのび太の幻想に過ぎないということには気付いていた。 しかし、狂った男の腰を止めるブレーキにはなり得なかった。 飽き足らなくなったのび太は前屈みになって腕を回し、静香のクリトリスに爪を食い込ませる。 耐え難い痛みを受けても静香はひたすら歯を食いしばるだけで、のび太の期待を裏切った。 「さっきみたいに痛がれ! みっともなく泣き喚けよ! ちくしょう! ちくしょう! ちくしょう!」 揺られ続ける静香の尻にポツポツと熱いものが落ちる。 静香はゆっくり顔を上げ、穏やかな表情で鏡越しののび太に語りかけた。 「なぜ泣いているの? 満足なんでしょう? こういうことが気持ちいいんでしょう? わたしはもうあなたのものよ。だから、そんな顔をしないで」 静香は鏡の中ののび太に温かな眼差しを向けていた。 「聖女にでもなったつもりか?」 「違うわ。でも、何だかあなたが可哀想に思えてきたの。 ねえ、泣くぐらいならどうしてこんなことをするの? 犯すなら、もっと堂々と犯せばいいじゃない」 「黙れ!」 静香の尻に手形が一つ増える。 それでも静香は構わず続けた。 「本当は愛のあるセックスのほうが好きなんでしょう? あなたは優しい人だったはずよ? ……ねえ、こうしたら気持ちいい?」 静香は不器用に体を前後させ、怒り狂った肉棒を慰める。 血の気が引いた青白い顔は慈愛の表情にすら見えた。 ――なんだこの女。頭がいかれちまったんじゃないのか? のび太は気味が悪くなって、静香の腰を抱き止めた。 「痛いくせにそんなことするな!」 静香はニッコリ微笑んだ。 「ほら、やっぱりあなたは優しい人だわ」 「う、うるさい! 優しい人なんているもんか! 誰も僕を愛してなんかくれないんだ! パパもママも、あのポンコツも! ……君だけはいつでも僕に優しくしてくれたのに、勝手にいなくなった一番の裏切り者じゃないか!」 「のび太さん、一旦落ち着いて話してみない? わたしも似たような悩みを抱えているみたいなの。あなたのつらさがわかるのよ」 「そうやってごまかすつもりだろ? 朝比奈さんを呼びに行くつもりなんだろ?」 「いいわ、じゃあ気が済むまでわたしを突いたら、それから話を聞かせて?」 「中で出すぞ?」 「それは困るけど、わたしは断れないんですもの。赤ちゃんが出来たら責任をとってね?」 「じゃ、じゃあ、僕と結婚してくれるの? 僕を愛してくれるのかい?」 「断れないんでしょ? 優しいときのあなたならいずれ愛せるかもしれないわ」 のび太は名残惜しそうに何度か動いたあと、突き立てた凶器を抜き去った。 「何か着てもいいかしら?」 のび太がバスローブを放ってよこす。 「ありがとう、のび太さん」 静香はおもむろにのび太に近付き、しっかりと抱き締めた。 「寂しかったのね、のび太さん。気付いてあげられなくて……ごめんね」 静香は同類を見付けた気分だった。 後ろ暗い経験を持つ人間は、寂しさが人を壊すということをよく知っているのだった。 ――この人は根っからの悪人じゃない。きっとやり直してくれる。 それが間接的に自分を許すための方便だったとしても、静香の目にはあの頃の優しいのび太が映っていた。 のび太は火がついたように泣き出した。がむしゃらに静香を抱き締めた。 締め付けられる胸が、破瓜した体の奥が痛んでも、お互いの温もりを静香は愛おしく思った。 のび太が泣き止むのを待って静香は言った。 「今日中にエッチしたらまだ初体験よね? もったいないから素敵な初めてをちょうだい?」 「お嬢様のくせにもったいないだってさ」 のび太は鼻声で笑った。 「成り上がりの娘ですもの。 今でも毎晩外食なんて申し訳ない気がして落ち着かないのよ? おかしいでしょう? いつ化けの皮が剥がれるかとビクビクしてるんだから」 「じゃあ、僕も化けの皮を……」 のび太は乾いた血がこびり付くペニスに復元光線を当てた。 仮性包茎でお世辞にも大きいとは言いかねるものだった。 「あら、とっても可愛いじゃない。女の子は大きさなんてそんなに気にしないのよ? 亀さんが厚着をしてたって、清潔にしてくれれば問題無いわ。 大きいと痛くて迷惑だって言うお姉様もいたぐらいだから、自信を持って」 「ありがとう、しずかちゃん!」 のび太に濃密な感謝のキスをされて、静香の女の子が疼いた。 「のび太さん……。わたし、……欲しくなっちゃった」 破瓜の痛みは残ったままだった。それでも構わないと静香は思った。 口付けをしたままベッドに辿り着くと、のび太は一から前戯を開始した。 「待って、今日だけは上手にしないでほしいの。 お互い初めてみたいにぎこちなくて、後で笑っちゃうような思い出がいいわ」 「『みたい』じゃなくて、僕も初めてなんだよ? 本物の女の子とはね」 のび太は静香の乳房を吸い、太ももを撫で回し、 適当にクリトリスを舐め回したあと、開脚したご本尊に向き合った。 いじりたいだけいじって、さっさと挿入。 そういうのがありきたりの初体験談にはふさわしいと思ったからだった。 「ここも復元しようか?」 「すごく痛かったから嫌よ。せっかく破いてもらったのに、もったいないわ」 「じゃあ、気持ちだけの初体験だね」 「違うわ、今日中ならいいの。のび太さんが満足するまでが初体験だもん」 「家に着くまでが遠足ルール?」 「そうよ」 「そりゃいいや。僕も賛成だ」 閨房にはおよそふさわしくない笑い声を上げた後、のび太が真顔になる。 「では、いた~だき~ます」 のび太は手を合わせて一礼した。 「ちょ、ちょっと待って。それじゃあ何だかおかしいわ」 「じゃあ、どう言ったらいいのさ?」 静香が思う初体験のイメージを伝えた。 「そんなの古いよ」なんて笑われたが結局採用になった。二人とも待ちきれなくなったのである。 のび太は再び真顔になる。 「僕で後悔しないかい?」 「ええ、あなたのために守ってきたんだもの」 のび太は『真実の姿』をクリトリスになすってお互いの帽子を脱がせ、呟いた。 「い、挿れるよ?」 「……優しくしてね」 静香は満足そうに目を閉じた。 静香の中はガバガバなどではなかった。 リアルサイズのび太ですらしっかりホールドするどころか、 ローションまみれの手で握り締めたよりもきついぐらいだった。 「こんなにきついマ○コだったら、さっきのは痛かっただろう? ごめんよ、しずかちゃん」 「もうちょっとロマンチックな謝り方って無いの? ……マ○コなんて露骨過ぎるわ。……マ○コなんて可愛くないじゃない」 ――何か、またわざと言ってるような気が……。 「今日はそういうの無しじゃなかったのかい? それとも、我慢できないの? マ○コにおちんちんを挿れられちゃったらさ~。 やっぱりしずかちゃんはスケベだな~」 静香の目が妖しい色を帯びる。 「マ○コにおちんちんが入ってるのね……。 わたし達、つながってるのね……。 お肉の壁とお肉の棒が混ざり合っているんだわ……。 粘膜と粘膜が仲良しさんなのね……」 静香は自分の言葉にプッと吹き出した。 「やっぱり今日はやめておくわ」 のび太は一つうなずいて、自分の作業に集中した。 「のび太さん、気持ちいい?」 「もちろん気持ちいいけど、あんまりはっきり訊かれるのもなんだかな~」 「わかったわ。じゃあ、黙ってる」 のび太はメリハリの利いたなかなかの突きを繰り出し続けた。 こればっかりは手抜きのしようが無いらしい。 加えて無意識のうちにクリトリスまでいじり回すものだから、 黙ると約束したばかりの静香が黙っていられなくなってきた。 断続的な甘い声がのび太の根本に直接響くようだった。 のび太が前のめりになって抱き締めると、静香はニッコリ微笑んだ。 「あったかいわね」 「うん、あったかいね」 グニュグニュとディープキスを交わし、『お肉の壁とお肉の棒が混ざり合っている』状況なのに、 目が合うと小学生の頃と変わらないクスクス笑いばかりが漏れた。 結局静香は荒々しい絶頂こそ迎えられなかったが、のび太に限界が近付いてきた。 「ごめん、そろそろ……」 「いいわ、わたしも満足してるもの」 抱き合ったまま、口付けを再開したまま、のび太は腰を速める。 ――で、出そう! でもあったかくて気持ちいいし……。あ~、いっちゃいそうだ~。 もうちょっとこのままいたいけど、どうしようかな。もうちょっとだけ……。あと一突きだけ……。 いやいや、もう一回だけ……。ん? まだまだいけるかな? ……やっぱり駄目だ! 間に合わない! 「あ~~~っ!」 のび太の動きがピタリと止まった。つながった一部分を除いて。 静香の下の口の中で新鮮な小魚の感触が跳ね回った。 しかし、今回の静香はそれを心地良さそうに受け止めていた。 「のび太さん、とっても熱くて……素敵」 静香の脳裏を「おかえりなさい」という言葉がよぎった。 待ちこがれた愛しいものが、やっと帰ってきてくれたような安堵感だった。 生き物としての使命を果たしたような感触に、静香は一筋の涙をこぼした。 出す物を出し終えると、のび太はムクリと起き上がった。 「ご、ご、ごめん、しずかちゃん! 中で出しちゃった……」 「しょうがない人ね。でも、今日は大丈夫な日だからいいわ」 用心深い静香は近いうちにこうなることを予測して、安全日なるものを調べておいたのだった。 「そうだったのか~、早く言ってよ~」 のび太は安心しきったように再び静香を抱き締める。 「だって、慣れちゃったら困るでしょ? そのままが当たり前になっちゃったら危ないわ。 さっきはああ言ったけど、大学を出るまでは待ってくれるわよね?」 「わかってるよ、気を付けます。でも損したな~、せっかく堂々と中出しできたのに……」 「残念でした。もう教えないから今度はちゃんと『お帽子』を着けてね?」 「ゴムなんてやだよ~。気を付けるからいいだろ? そうだ! 安全日ならこのままずっとつながっててもいいんだよね? 元気になったらもう一回しようよ!」 「もう、……今日だけよ?」 「わ~かってるって」 なんだかんだ言って、静香もあの熱い感触をもう一度味わってみたかったのだった。 二人はつながったまま『あの頃』の思い出話などしながら復活を待ち、そのままもう一回戦繰り広げた。 静香の痛みもほとんど無くなり、のび太のテクニックが大活躍した。 ほぼ完璧に絶頂のタイミングが一致し、深く満たされた一戦であった。 だが、この一回が命取りになった。 次話に進む 戻る 小説保管庫に戻る
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「…あんた!いい加減起きなさいよ!!」 「……」 …あと5分だけ…… 「…いいから早く起きなさいってばぁー!!」 ドカッ 「アッー!!」 腹にこれまで体感したことがないほどの衝撃が走り、俺は悶絶した。胃液が逆流する!! 「ぐぇぇ……」 幸いなことに、昨日の夕飯は消化しきれていたらしく、それほど布団への被害は出さずに済んだ。 「やっと起きたわね。おはよ。」 「おはよ、じゃないよ……なんで朝からこんな目に会わなきゃいけないのさ……」 「あんたがなかなか起きないからよ。」 「…そうじゃなくてさ。なんで小鳥遊がここにいるのか聞いてるの。」 そう。何故か今朝は奈々乃ではなく、小鳥遊が起こしにきていた。そして何故か馬乗りの体勢だった。まてよ、でも、一体どこから…… 「なんでって、お隣同士だからよ。これくらい全然問題ないでしょ?」 小鳥遊が指差す先には、開け放たれた窓から朝日が差し込んでいた。…まさかここから入ってきたのか……凄い行動力だな。 すると、食堂のある1階から足音が聞こえてきた。俺は戦慄した。とてつもなくいやな予感が頭をよぎる。 ガチャ ドアが開くと、奈々乃は心配そうに部屋を覗いた。 「…兄さん?今の音は―」 奈々乃は言葉を失い、立ち尽くしている。…えっと、これはもしかして朝からピンチかね?俺と小鳥遊が朝から俺の部屋に二人きりでいる時点で既に問題だけど、まして今の体勢は…… 「二人とも!!何やってるんですか!!!」 第3話《その名は監督生》 「お前も大変だな、山根岸…」 「心が折れそうだ……」 その後、当然彼女たちは口論となり、俺はそれに付き合わされることとなった。電車に乗るとボブがいたせいか、二人ともおとなしくなった。 「気の毒なお前に、俺の愛をぶちまけてやろう……」 「結構です。」 「そうキッパリ言うなよ…やろうぜ相棒。」 二人ともいい具合にボブを見て引いているな。特に小鳥遊は初対面だ。このインパクトは大きいはず…… 俺はボブの話に付き合い、どうにか二人のテンションを抑えつつ、学園へと向かった。 そして昼休み、俺は昼食を終えて教室でくつろいでいると突然、元武に呼び出された。元武についていくと、先に大堂が待っていた。どうやらこいつも呼ばれていたらしい。 「二人とも!!俺の話を聞いてくれ!!」 「えっ?あ…うん。」 …今日の元武はやけに興奮気味だな。何かあったのだろうか? 「俺は最近の校内の風紀の乱れに、我慢がならない!!」 「…はぁ。」 「…それで?」 元武は一拍置き、俺たちは傾注した。 「…そこで俺は、この学園に監督生部を設立したいと思う。」 「なんだそりゃ?山根岸、聞いたことあるか?」 「いや…」 とは言ったものの、俺はその単語、どこかで聞いたことがあるような気がしていた。…いや、やっぱり気のせいか。 「俺は先週、ある映画を見た。内容は、主人公の3人組みが学校の治安維持のためにかり出され、風紀の改善に向かってあれこれ活動するという感動的なものだった。その主人公たちの役職名こそが、“監督生”だ。俺はそれを部活の形でやってみたい。だが、そのためにはお前たちの協力が是非とも必要だ。頼む!俺に力を貸してくれ!!」 また厄介事を……俺は大堂とこいつを説得しようと思ったが、大堂の様子を見る限り、こいつまでやる気らしい。……仕方ないね。 「…わかったよ。協力する。」 「本当か!?感謝するぞ山根岸!!では、早速今日の放課後から活動開始だ!!」 ―《監督生》の称号を手に入れた― 「……では結局、この状態では部として成立しないと?」 「当たり前だ。お前ら、高三にもなってそんなこともしらねぇとは、終わってるよ!!」 放課後、俺たちは顧問となる教師を探すべく、鎮圧者に相談したのだが…どうやら俺たちは大きな勘違いをしていたらしい。鎮圧者の話によれば、部を発足するには最低五人の生徒が必要で、五人そろった上で初めて顧問がつけられるらしい。つまり、俺と元武、大堂の三人では監督生として活動することはおろか、そもそも部を立ち上げることが出来ないというわけ。 「……高島先生殿!俺の熱意は本物なんです!!是非俺たちに“監督生”をやらせてはいただけませんか!!!」 「ムリなもんはムリだ。元武、これは学園の“規則”だからな。」 「…ッ!」 規則という言葉を持ち出され、元武は苦悶の表情を浮かべた。……まぁ、こればっかりはどうしようもないかな。こんな部にあと二人も集めるなんて、どうがんばっても…… 「……あっ」 「…どうした山根岸?」 「いるよ。あと二人、付き合ってくれそうなやつが……」 「それは本当か!!先生、あと少しだけ待ってください!!」 「……わかった。さっさと呼んで来い。」 俺は二人がまだ校内にいることを祈りつつ、二人を探しに向かった。 数分後、俺はなんとか奈々乃と小鳥遊を捕まえ、元武、大堂とともに鎮圧者に再度掛け合った。まぁ、彼女たちには悪いが、事後承諾という形をとらせてもらうか。 鎮圧者との交渉は思いの外スムーズに進んだ。この調子なら、納得してもらえるだろう。元武も喜んでいるみたいだし、二人を呼んできたかいがあったな。 「…ところで、今連れてこられた二人、山根岸の妹ともう一人、名前は確か、小鳥遊だったか。お前ら、もう監督生部については聞いてるのか?」 …どうやら、鎮圧者は一筋縄でいく相手じゃなかったらしい。これは、もう、終わったな。元武にはあきらめてもらうしかなさそうだ……案の定、2人は怪訝そうな顔をして俺を睨んでいた。一応説明してみるか… 「…二人とも、落ち着いて聞いてくれ。俺たちは、新しい部活として、監督生部を立ち上げようと思うんだ。でもそのためには最低五人のメンバーがどうしても必要でさ。二人に来てもらったのは、そのためで……」 俺がそこまで話したところで、小鳥遊が凄い剣幕で迫ってきた。まぁ、誰だって怒るよな…事情も話さず呼びつけて、その上理由が数合わせだなんて…… 「た、小鳥遊、ごめんなさ―」 「おもしろそうじゃない!乗ったわその話!!」 「…へっ?」 …いまこいつ、なんて? 「…あら?三人ともなんでかたまってるのよ?あたしも参加するって言ってるの!」 「あ、あぁ。ありがとう小鳥遊。正直、お前が参加してくれるとは思わなかったよ。」 「ま、あのときの借りはこれで返したわよ。」 これで四人か…奈々乃は― 「わ、私も参加しますっ!!」 どうやら相当乗り気らしいな。ふぅ…人数の件はこれで解決か。あとは鎮圧者次第だな。 「高島先生殿!!五人、集結しました!!」 「…仕方ない。あんまり乗り気じゃないんだがな、顧問、任されてやるよ。」 「ありがたき幸せ!!」 「ま、トラブルだけは起こすなよ!」 かくして、俺たちの監督生部は発足した。 翌日、放課後に俺たち監督生部の面々は、部室として与えられた第一会議室に集まった。無駄に広いな…… 「ここが我々の拠点となる場所か。」 「…無駄に広いわね。」 「広いに越したことはないよ。なぁ、兄貴?」 「あぁ。」 確かに、部室としては申し分ない。冷暖房完備、一年中快適に過ごせそうだ。 「よし!では、これより第一回目の監督生部の活動を開始する!!以後は、部長である俺の指示に従ってもらうぞ。よろしく頼む!」 ずいぶん偉そうな口上だったが、元武が言うと不思議と腹は立たなかった。やっぱり貫禄というかオーラというか…そんな何かが備わっているんだろうな。 俺が感心していると、突如として部室のドアが開いた。一体誰が? ドアの向こうには、見慣れない生徒が立っていた。その他にも数名の取り巻きらしき生徒が見える。…あの人は確か― 「貴様!俺たちに何の用だ!!」 突然、元武が彼らに向かって叫んだ。こめかみに血管が浮かんでいる。元武はこいつらを知っているのか? 「元武、この人たちは?」 「…こいつらは生徒会の連中だ。自らの意にそぐわない者はどんなに汚い手を使ってでも徹底的に排除する、そんなやり口で今の独裁体制を保ってきた。ダニのようなやつらだ……」 「フッ…ダニのようなやつらとは、ずいぶんとご挨拶だね。元武コウくん?いかにも。僕たちは生徒会の人間さ。そして、僕が生徒会長の高林カツだ。」 高林 カツ…聞いたことがある。確か前の生徒会長を汚職の噂を流して失脚させ、副会長から会長にのし上がったという、いわくつきの生徒会長だ。会長になった後も、悪い噂が絶えることはなく、なりふり構わないダーティープレイで反対する勢力を潰しているらしい。でも、その生徒会長が俺たちに何の用だ?まだこれといった問題は起こしていないはずだが…… 「…単刀直入に言おう。キミたちの発足した監督生部、生徒会としてはその存在を許すわけにはいかないんだよ。」 …どういうことだ? 「何故だ!?」 「理由は簡単さ。まず部長がキミ、元武くんだからだよ。キミは過去に何度も暴力事件を起こした問題児だ。それも最悪のね。もうひとつの理由は、部の活動目的がまるで分からないことさ。問題児の作った目的不明の団体。これだけ理由がそろえば生徒会としては活動停止にするしかないのさ。そうだろう?」 「…貴様!!」 我慢の限界だったのか、元武は俺たちが止めるまもなく高橋にとびかかった。だが、すぐに控えていた数名の生徒に取り押さえられてしまった。 「暴力はごめんだよ。元武くん。やっぱりキミたちは危険らしい。近いうち、部の登録は抹消しておくよ。じゃ、ごきげんよう。」 俺たちが唖然とする中、生徒会のメンバーは部室を後にした。 To Be Continued 《次回予告》 監督生部は早速大ピンチ あいつはあいつでずっと妹とべったりでしょ!? あたしのことにはちっとも気付いてないみたいだし… ホント、ついてないわね…… 次回、『山根岸名人の冒険島』第4話 《恐怖!監督生殲滅命令》見てくれないと、暴れちゃうから!